窪美澄さんトーク&サイン会 レポート

本の学校の桜の木がピンク色の花びらをつけはじめた3月15日、作家・窪美澄さんに新刊『よるのふくらみ』についてお話をしていただきました。
進行は、新潮社で窪さんの作品の編集をご担当されている西さんに務めていただきました。

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「米子には初めて来たんですよ」とおっしゃる窪さん。
「山陰にはなかなか来る機会がないので今日は嬉しいです。丁度偶然にも来る前に谷口ジローさんの『父の暦』を読んでました。その中で鳥取大火のシーンがでてきてね~」
谷口ジローさんはもちろん、『父の暦』の主人公も鳥取出身ですもんね。これは運命ですね!(笑)

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新刊『よるのふくらみ』は商店街で生まれ育った兄弟と女の子の物語。
実は窪さんご自身のご実家も昔ながらの商店を営んでいらしたそう。
ご近所付き合いも深いことから、『よるのふくらみ』と同じように、みんながそれぞれの家庭の出来事を知っているような雰囲気があったそうですよ。

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今回、各章で語り手が違うのは、同じひとつの事実でも人によって真実が違うということを描きたかったんだそうです。
特に恋愛に関しては、「女の子が見たり感じたりしたものと男の子が見たものはまるで違うでしょ」と。
例えば最初の1編だけ読んでも、語り手のみひろちゃんから見ると圭ちゃん(兄弟の兄)はとてもエゴイストでわがままで嫌なやつ。
だけど、圭ちゃんにしてみれば、やっぱりいろいろ事情もあったりする・・・。
「その部分って現実では分からないから、そこを書きたいんです」と真剣におっしゃってました。
それは恋愛だけでなく、親子関係や家族関係だったり、「人間関係」というものがみんなそう。
「同じものを見ていても、人によって見方がぜんぜん違う。そこが小説を書いていて面白いところ」

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実は『よるのふくらみ』にはインスパイアされた作品があったそうです。
それはつげ義春さんの『外のふくらみ』。
つげ義春さんが精神的に苦しんでいらっしゃる時に描かれた作品で、
その中で、部屋の窓から、柔らかい「不安」のようなものがムニュウっと出てくるシーンがあるそう。
そんなつげさんの絵のように、隠していた性的な何かとか、自分が口に出して言えない思いなどが、夜にムニュウっと膨らんで窓から出てくるようなイメージで書かれたそうです。

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窪さんが小説を書かなければならない!と思われたのは35歳の時。
自分の中の口に出してはいけないような感情を言えるのは小説しかない、と思われたそうです。
感情を露わにして「こういうことあるよね」と物語にして見せられるのは小説だけだと感じて決意なさったそうです。
そうおっしゃる窪さんの目は力強く、おもわず見惚れるほどでした。
会場のお客様もぐっと力が入ったように思いました。

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今後も今のペースを落とさずに書き続けていきたいと言ってくださった窪さん。
ファンとしてはこれ以上の喜びはないですよね!
同期の作家さんには朝井リョウさん、柚木麻子さんがいらっしゃるのですが、「エネルギッシュなふたりには負けてられない!」とここでライバル発言!?
実は3人はとっても仲が良くて、何かあると相談しあったり、お互いに励まし合ったりと、うるわしい友情で結ばれているんだそうです。
「良きライバルで励みです」とにっこり笑顔で教えてくださいました。
新作が今から待ち遠しいですね。

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トークショーの後はサイン会です。
熱心に窪さんとお話される男性のお客様の姿もありました。
ほとんどの作品を読んでるっておっしゃってましたよ。
他にも、松江からお越しいただいた女性もいらっしゃいました。

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お名前の他に、みなさんにひとことずつコメントもいれてくださる窪さん。
この「ひとこと」がファンは嬉しいんですよね~

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そして、ペイジとの2ショットもいただきましたよ!やったね~

窪美澄さん、貴重なお話を本当にありがとうございました!

※文章・画像の無断転載・複製を禁止します。

 

 

 

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