第3回「ミステリー小説を楽しむ会」レポート

9月12日(土)に第3回「ミステリー小説を楽しむ会」を行いました。
参加者は、男性5人、女性3人の計8人。
ミステリー小説好きが、‘これは!’という本を紹介!ミステリーをあまり読まないけど、ちょっと興味があるという方も参加されました。
初参加の方がたくさんのミステリー小説を紹介してくださいました。早速読みたくなりましたよ!

それでは、ダイジェストです!!

★おススメの本格ミステリーです!(ミステリー好き男性のおススメ)
●講談社『神様ゲーム』麻耶雄嵩 ¥530(税別)
・講談社が子ども向けに出版した「ミステリーランド」の作品を文庫化したもの。
小学校4年生の主人公が、掃除しているときクラスメートの一人から自分は神様だと聞かされる。
ただのゲームだと思っていた少年だったが、神様だと名乗る少年は、猫殺しの事件の真相をぴたりと当てたり、ある事件の犯人に天罰を与えてとお願いすると、本当に事故に遭ったりする。
子供向けと言いながら不条理な内容。
ラストのどんでん返しは驚くが、なんだかスッキリしない終わり方。
でもこの作家の作品は概ねそんな作品。

●講談社『猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数』北山猛邦 ¥700(税別)
・メフィスト賞受賞作家。主に本格ミステリーを描く。
大学のゼミ「探偵助手部」のメンバーが孤島で合宿することになる。
台風で孤島からの脱出不可能になる中、次々と不可思議な事件が!棺に入った蛍光塗料付きの死体が夜光ったり、孤島の地下で透明な箱に密封された死体が発見されたり!
想像を絶する展開!本格ミステリー好きにおススメ。

●講談社『黒と茶の幻想 上下巻』恩田陸 上下各¥619(税別)
・学生時代同級生だった4人の中年男女が屋久島でハイキングをするストーリーだが、そのハイキングの過程で語られる話が凄い!
昔の謎やミステリー話がふんだんに登場する。
読んでいると引き込まれ、先が気になり心がざわつく。
謎の提示もうまいが、初期の作品はラストの終わり方に難ありという感じ。
でも今はすごく上手くなりすぎている。
作品間のリンクがあり、この本も「三月の深き紅の淵を」の登場人物から繋がる。

●祥伝社『扉は閉ざされたまま』石持浅海 ¥600(税別)
・「刑事コロンボ」「古畑任三郎」のように、犯人が最初からわかっていて、犯人の目線で語られる倒叙ミステリー。
女性探偵が密室で起きた事件で犯人に迫ってゆくストーリー。
女性探偵・碓氷優佳シリーズ。他に「君の望む死に方」「彼女が追ってくる」がある。

★海外のおススメミステリー作品(活字中毒の男性)
●東京創元社『カーラのゲーム 上下』ゴードン・スティーブンス 上下各¥720(税別)
・ドイツ・ルフトハンザ機がハイジャックされた!そのリーダー、カーラはボスニアの内戦で夫と子どもを失う。
そしてテロ組織に入る。世界各国でハイジャックを起こすカーラには、テロ組織を利用してどうしても成し遂げたい目的があった!
ボスニアの人たちの悲しみと絶望がリアルに描かれていて切ない。SNSがからむ冒険小説。
表紙のイラストは生頼範義氏。「吸血鬼ハンターD」のイラストと似ているが、そちらの方は天野喜孝氏。
その原画12点がアマゾンで2億円で販売されたらしい。

●文藝春秋『限界点』ジェフリー・ディーヴァー ¥2,000(税別)
・科学捜査のリンカーン・ライム、尋問の天才キャサリン・ダンスシリーズではない。
主人公は証人保護のボディガード。保護するのは警察官一家。敵は、対象者を拉致、拷問し情報を聞き出し殺す暗殺者。
その暗殺者は巧みに人を操り対象者に迫ってくる。そしてボディガードも暗殺者のトリックに対抗し証人を守る。
果てしない頭脳戦でディーヴァーお得意のどんでん返しに次ぐどんでん返しの連続でとにかく面白い!
(どんでん返しが多すぎて、ディーヴァー作品が読めなくなった人にもおススメです。)

★おススメ作品がたくさんあります!(初参加!超ミステリー好きの大学生)
●東京創元社『招かれざる客たちのビュッフェ』クリスチア・ブランド ¥1,200(税別)
・1940年代に描かれた作品。倒叙もの、密室、法廷、なんでもありのミステリーフルコースの短編集。
著者がミステリー作家になったきっかけが過激!
OL時代に嫌な同僚と接する中でミステリーのアイディアが生まれて行った。
処女長編「ハイヒールの死」で目的を達成!?収録作「ジェミニー・クリケット事件」はミステリー短編10本の指に入る傑作と北村薫 が絶賛。
ブラックなトリックを使った展開と、多重推理を繰り広げるミステリーが得意。
山口雅也が「世界の謎解きミステリー5大作家」の一人に挙げている。

●光文社『戻り川心中』連城三紀彦 ¥533(税別)
・1960年代は松本清張が売れて社会派ミステリーが大ブームになったが、横溝的な本格ミステリーを復活させようということで、「幻影城」という文芸誌が出来た。
連城氏はこの雑誌でデビュー。著者は短編を描かせたら右に出る者はいないレジェンド的作家。
この作品も短編集。恋愛を絡めた人間の深層心理をミステリーの手法を使って暴き出す。
その描き方は超絶技巧(あまりにも突飛な内容で連城さん人間!?って思ってしまった。)と言っても過言ではない。
物理的トリックはあまり使わない。不倫とか浮気のネタの話が多い。
「戻り川心中」は映画化された。講談社文庫で「連城三紀彦レジェンド」が発売中。

●東京創元社『七人のおば』パット・マガー ¥900(税別)
・1946年の作品。ちょっと古い作品だが、とにかく面白い!異色の‘Whodunit’もの。
結婚したサリーの元へ実家から連絡が入る。
「おばさんが夫を殺した」と!だが、サリーには7人のおばがいる。
夫を殺したおばとは一体どのおばか?サリーの夫・ピーターが探偵役となり推理を展開し夫を殺したおばを特定してゆく。
しかし7人のおばはどれも極悪な悪女ばかり。
難航する推理・・・。個性的な安楽椅子探偵物。最近でいうイヤミスのようなストーリー。

●講談社『厭魅(まじもの)の如き憑くもの』三津田信三 ¥950(税別)
●講談社『首無の如き祟るもの』三津田信三 ¥890(税別)
・ホラーと本格推理が融合した横溝正史ワールドを彷彿とさせるミステリー作品。
怪奇幻想小説家・刀城言耶が名探偵として活躍。刀城が、ある村落に取材で滞在したことから、そこで起こる凄惨な事件に巻き込まれるが名推理で事件を解決する。
物語によってテーマが違う。遺産争い、家督相続、昔からの因習、幽霊伝説などが絡んで起こるミステリー。
現代で横溝的、乱歩的な作品を描けるのはこの人しかいない。
このシリーズでは特に「首無の如き~」の首無のトリックが超傑作で凄い。

●早川書房『終りなき夜に生れつく』アガサ・クリスティー ¥840(税別)
・「ポアロ」「ミス・マープル」シリーズなどで有名なクリスティ。
しかし、この作品に探偵は登場しない。
ラブロマンスとミステリーが融合、ラストに明かされる真相が凄すぎる。
主人公のマイクは、大富豪の令嬢・エリーと結婚し、「ジプシーヶ丘」に土地を買う。
だがその土地は呪われているとの伝説があり、二人がその土地に住み始めると周りの住人から嫌がらせを受けるようになる。
気にせず暮らしていたが、ある時悲惨な事件が発生する。
エリーと家族の人間模様も丁寧に描かれている。
マイナーな作品に物凄い傑作がある。読みやすい。文字も大きい。推理の面白さが保証されている。

●角川書店『明治断頭台』山田風太郎 ¥781(税別)
・役人の汚職を調べ糾弾する役所の大巡察、香月経四郎と川路利良が遭遇する謎めいた事件の数々。
事件の鍵を握るのは、フランス人美女エスメラルダの”口寄せ”の力!? 意外なコンビの活躍がクセになる!
さらに驚天動地のラストが待ち受ける異色の明治小説!
光と闇が混ざり合ったカオスの時代・明治。
その時代にスポットを充てた一番の傑作!
戦後日本のエンターティメント小説で一番面白い作品の描ける人だと思う。
角川文庫「虚像淫楽」¥705(税別)は、山田風太郎傑作ミステリー短編集。山田作品初の人におススメ。

★ちょっと古いけど面白い海外ミステリー(古典ミステリー好き女性)
●東京創元社『被害者を捜せ!』パット・マガー ¥680(税別)
・以前早川書房からポケットミステリで発売。犯人は明らかに誰かを殺したのに、誰を殺したのかわからない。
船の甲板から誰かが落ちたけれど、目撃者はなぜかそれを言わない。
誰が被害者なのか?

●東京創元社『4人の女』パット・マガー ¥560(税別)
・前妻、現夫人、フィアンセ、それに愛人。
人気絶頂のコラムニストをとりまく四人の女性。
彼はひそかに自宅のバルコニーの手摺に細工した上で、四人をそろって招待し、ある晩、ディナー・パーティを開いた。
彼には、その中の一人を殺さねばならない動機があったのだ!?
被害者捜しの新手に挑む傑作!クリスティ「ゼロ時間へ」(早川書房)は、人の命を奪う魔の瞬間“ゼロ時間”に向けて、着々と進められてゆく綿密で用意周到な計画。
ミステリーの常識を覆したと評価の高い画期的な野心作。「4人の女」と展開が似ているので、比較して読むと面白いかも。

★最近の社会派ミステリーの傑作です。(ミステリー大好き女性。)
●講談社『シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官』川瀬七緒 ¥820
・著者は「よろずのことに気をつけよ」で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。
この作品は昆虫博士が警察捜査に加わる「法医昆虫学捜査官」シリーズの第2弾。
トランクルームから女性の腐乱死体が発見される。
女性昆虫学者に加え、強面刑事と相棒のイケメン刑事と3人で現場に遺された昆虫と珍しい植物から事件の真相を暴くという警察ミステリー。
警察捜査に昆虫博士が加わる異色作。
さらに主人公の女性昆虫学者が魅力的!強面刑事との仲が気になる。

●文藝春秋『一応の推定』広川純 ¥590(税別)
・松本清張賞受賞作。老人の轢死体が発見される。その老人は保険に入ったばかりだった。
保険金を払うかどうか、ベテラン保険調査員が調べると、会社倒産の危機、難病を患う孫娘の金策等で苦悩している事実があった。
それで自殺したのではないかという「一応の推定」という結果を出さざるを得なかった。
しかしベテラン調査員は納得できず、老人の死の真相を探る。
ラストの真相に泣ける!さらに保険調査の裏側が詳細に描かれた社会派ミステリーの傑作!

●光文社『ロスト・ケア』葉真中顕 ¥680(税別)
・日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
何人もの寝たきりの老人を殺害した罪で死刑を宣告された男。
だが遺族たちはその判決に複雑な気持ちを抱く・・・。その理由とは?
現代日本の介護の現状をあまりにもリアルに描いた衝撃作!人は誰もいつかは必ずやってくる。
介護する側、そしてされる側。厳しい現実を突き付けられ、読むのがつらくなる。


以上、今回は本当にたくさんのミステリー作品が登場しました。
話を聞いていると全部読みたくなってしまいました。
そして、ミステリー周辺の小ネタも満載でさすがのミステリー好きも知らないことがたくさんありました。
知らなかった作品、面白そうな作品に出会えますよ!
「ミステリー小説を楽しむ会」また開催しま~す。

関連記事

ページ上部へ戻る