なばたとしたかさん インタビュー

『こびとづかん』で大人気の作家・なばたとしたかさん。
大人も子どもも夢中になるその独特の世界は秀逸で唯一無二!
本の学校今井ブックセンターリニューアルオープン記念イベントして、サイン会にお越しいただいた なばたとしたかさんに、お話をうかがいました。
★本の学校でのサイン会の様子はこちら

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|毎日格闘の連続でした。

イマイブックス(以下「イ」):絵はずっと描いていらっしゃったんですか?

なばたとしたか(以下「な」):子どもの頃から絵は得意でしたよ。
小さいころに絵を描いて親に見せたら、すごく褒めてくれたんです。
絵を描くと親が喜んで褒めてくれるっていうのが刷り込まれて、だからずっと描いてました。

イ:じゃぁ、図工や美術の時間は楽しかったんじゃないですか?

な:でも、写生大会とか、わざと下手に描いてました。(笑)

イ:え?どうして?

な:目立ちたくなかったんです。(笑)
上手に描いて優秀賞なんて取ろうもんなら、壇上に上がらされたりするじゃないですか、みんなの前で。
恥ずかしくて上がりたくなかったんです。(笑)

イ:じゃぁ、あえてその才能を隠していたわけですね。(笑) その後は?

な:東京アートイベントなどに出展しながら、実家住まいで絵を描いてました。
あるイベントで賞をもらったのがきっかけで、絵で生きていこうと決意して、それまで勤めていた仕事も辞めました。26歳の時でした。

イ:なんのお仕事をされてたんですか?

な:地元の額縁屋です。額縁切るの上手いですよ。(笑)

イ:「こびと」の絵はいつごろから描いてたんですか?

な:その時から、すでに「こびと」は描いてましたね。
あっ、丁度今年で10年だ。

イ:お!記念の年じゃないですか!
本を出すきっかけも、賞を取ったからだったんですか?

な:当時、アートイベントにいろんな作品を出展しながら、会場で売れるものも作っていたんです。
その中の一つに「こびとづかん」という小冊子も作ってたんです。
家のプリンターで印刷して、自分で裁断して、ホチキスで留めるという…まさに内職のように。(笑)

イ:オール手作り?

な:これがなかなか大変だったんですよ。家庭用のプリンターじゃないですか。毎回毎回たくさん印刷するでしょ、そうすると調子悪くなって、しょっちゅう壊れてました。(笑)
表と裏を間違えて逆さまで留めてしまって失敗したり、毎日格闘の連続で、日夜作業を進めてましたね。
苦労した分を考えて1冊1500円という値段をつけたんです。
で、その小冊子が500部売れたら出版社に持ち込もう!と決めてました。

イ:じゃ、売れたんですね!1500円で500部ってすごいですよね。

な:イベントで結構調子よくポンポーンと売れたんですよ。それで最初に決めていた通り、とある出版社にその小冊子を送ってみたんです。
でも、1ヶ月くらい待ったけど全く返事がなかった!(笑)

イ:えー!?

中西(「こびとづかん」の編集者。以下「中」):返事しなかったのは僕なんですけどね。(笑)

イ:えーー!?

中:いやいや、放ったらかしにしてたわけではないんですよ。
すごく気になる絵だけど、これどうしよう?といつも悩んでいたんです。
見ず知らずの若者が送ってきた小冊子に心動かされてました。
知り合いの編集者や作家の反応もみたくて、「これどう?」って見せたりしてたんです。

な:いつまで経っても返事がないから、こっちから電話しました。(笑)

イ:(笑)

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|もっと柔軟な視点でいろんなものを見てほしい

な:出版社に作品を送って、最初に思い描いていたのは、『こびと大百科』みたいな図鑑的な本だったんですよ。
そうしたら中西さんが、まずは絵本にしようって……。

中:当時、僕の中で「絵本」というものに対していろいろ思うことがあったんです。そこに「こびと」が送られてきた。
なばた君となら何か新しいものを絵本で見せられるかもと思って、絵本を提案したんです。

な:で、絵本となるとストーリーを考えなきゃならないじゃないですか。もう大変でしたよ。(笑)

イ:出来上がるまでしばらくかかったんですか?

な:うん、2年位はかかりましたね。
絵本になって発売されてすぐ、地元の石川県の書店を、中西さんと二人で回りましたね。これ、置いて下さいって。
地元に限らず、最初はどこの書店さんも気持ち悪いっていって(笑)、なかなか注文してもらえませんでした。
児童書売場に置けないからと言われて、美術書とかサブカルの担当者に頼んで発注してもらったり、当時は苦労しましたよ。
ただ、地元のある書店さんが「おもしろいね!」ってたくさん仕入れてくれて、そのお店に僕毎日通いました。(笑)

イ:毎日ですか!?

な:うん。毎日売場でお客さんに声をかけて、こびとを描いてあげたりサインしたりしてました。
そしたら、その当時養老孟司さんの『バカの壁』がベストセラーですんごい売れてたんですけど、その店は『バカの壁』を抑えて、僕がずーっと1位でした。(笑)

イ:養老孟司さんに勝った男ですね。(笑)

な:そうそう、そんなこともありましたね。
多くの人が「絵本」というイメージを持って絵本を見ています。その大人のイメージから少しでも外れてしまうと、「子ども向けではない」と判断されてしまう。
でも実際はそうではなかったりしますよね。
絵本に限らず、もっと柔軟な視点でいろんなものを見てほしいと思っています。

イ:そうですよね。今日サイン会に並んだ子どもたちも、ずーっと持ち歩いて見てるんでしょうね。
もうボロボロになった『こびと大百科』を持って来てくれたりしてましたよね。

な:そうそう、破れたところをテープで貼ったりしてね。
本当嬉しいですよね。
大人になってもずっと覚えていてくれる本になってほしいです。

イ:サイン会でもみんな一所懸命、こびとを探した話とかもしてくれてましたよね。
大人になった時に、自分の子どもに「お父さんが子供の頃、公園にこびとを探しに行ったんだ」なんて話してくれると嬉しいですね。
今日は貴重なお話をありがとうございました。

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【プロフィール】
なばたとしたか

1977年3月30日、石川県生まれ。
2002年、GEISAI-3 毎日新聞スカウト賞受賞。
2003年、毎日新聞『weekly くりくり』に作品を連載。
2006年、初の絵本『こびとづかん』を発表。大きな反響を呼んだ。その後『みんなのこびと』、『こびと大百科』、『こびと観察入門』『こびと大研究』を刊行。
子どもから大人まで幅広い層で人気を集め、現在シリーズ累計250万部に及んでいる。その他の作品に、創作絵本に『いーとんの大冒険』などがある。
2013年12月には、最新刊の工作ブック、『こびと自遊帳(じゆうちょう)』(ロクリン社)が刊行される

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