第48回内田樹読書会レポート

4月27日(木)に第48回内田樹読書会を行いました。
課題図書は、内田樹先生「もういちど村上春樹にご用心」(文春文庫)です。
内田先生的村上春樹論を語り合います!男性5人、女性5人、合計10人で話しました。
★課題図書「もういちど村上春樹にご用心」内田樹 文春文庫 ¥670(税別)

それではトピックです!!
まずは、村上春樹の好きな人挙手!4人 それなりに読む3人、全く読まない3人。という結果に・・・。

・この本は内田先生の村上春樹愛が半端ない。春樹さんは本当にそんなこと思っているのかわからないのに断定して書いているのが面白い。
・村上作品の特徴は、「平均的主人公の日常に、ふいに邪悪なものが侵入してきて、愛するものをそこなうが、非力で卑小な存在である主人公が全力を尽くしてその侵入を食い止め、邪悪なものを押し戻し世界に一時的な均衡を回復する」(本書文中より)がベース。
・構成は単純。同じパターン。邪悪なものはホラー、怪物、幽霊。物語によってさまざまな形で登場する。
・絵に描かれた登場人物が突然現れる。それは主人公だけにしか見えない。それを疑問に思ったら読み進められないと思う。
・「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」はファンタジー作品として面白かった。
・「十二国記」は、平成の弱虫女子高生が、異世界に連れてゆかれ、その後数々の苦行に打ち勝ち「女王」となって民を束ねるようになる異世界ファンタジーだけど、春樹作品のファンタジーは?
・春樹作品にとっての異世界は「説明しようのないもの」だと思う。
・春樹作品の主人公は、理不尽な目に遭ってもオロオロしつつ、それでも日常生活を営み、咀嚼し折り合いをつける。僕はそれでも生きて行こうと・・・・。これこそが、「あ、私(ボク)のことが書いてあるんだ!」思わせる。共感できる人が多いのではないかな。春樹作品を読んで、皆が思い浮かべるノスタルジーを感じる。欠性のリアリティ。知らない事だから、欠けてるってことの共感だと思う。
・村上作品は、登場人物や日常の描き方がとても魅力的で、文章も非常に上手いし、さらに読者を巻き込むのが上手いと思う。
・春樹作品の偉ぶらない描き方が好き。昔の自分に返って何のために生れてきたのか?そんなことを考えてしまう。原点に戻してくれる感じです。
・日常生活を営むシーンになぜか安心する。自分がここにいても良いんだという共感。
・村上作品は初期の平凡な主人公像から、次第に攻撃的になってゆく。1Q84ではついに殺人が起こる!徐々に変化している感じ。バイオレンス(海辺のカフカとか)的要素が入ってから読者層にも変化が起こった気がする。
・村上作品が苦手な人には、主人公に共感できないとか、主人公が鼻持ちならないということで敬遠する人がいるらしい。
・確かに「ノルウエイの森」は、主人公ってどれだけモテてるんだという気にはなるけど・・・。主人公は感情が爆発するでもなく、淡々と平坦に描かれてもやもやさせて終わる?そして部分的にでも、「これオレ?」っていうところが女性なり男性なりを共感させていると思う。男性は「ダメなボク」が良い。
・「ダメな僕」がモテモテというのが男性にとっては憧れに繋がるのか?だから外国人にも受け入れられるのかな?
・池波正太郎や司馬遼太郎が、世界に受け入れられないのは、強くてかっこ良くて熱いからか。それは日本人にしか受け入れられないものかも知れない。
・ダメな僕に女子がたくさん集まって解決してくれる!的な感じが受け入れられるのか・・・。
・母性本能が働くかどうかだと思う。
・もしかして、村上作品って、ゼロから始まってマイナスになってまたゼロに戻る話?
・そうです!その通り!(春樹ファン参加者全員一致)
・邪悪に対抗する唯一の手段は規則正しい生活!?(淡々と過ごす。)
・ところで、「村上春樹にご用心」を読んで、春樹作品対する気持ちはすっきりしたのか?
・すっきりした。(春樹ファン参加者全員一致)
・村上春樹作品は、読んで何か解決を求めるものではなく、例えば栄養にはならないけど、おいしいコーヒーの香りを楽しむ的要素の本だと思う。リッチな気分なる。
・重要な人物が途中で消えてしまうことが多い。それは異界に導くキーワード的人物。
・人は人生の中で様々な取捨選択をする。それを作品に反映させている。現実そのものリアル。僕だけの話。キャラクターの視点で描いてあると思う。
・「騎士団長殺し」は父親と家族の話。父を描かない春樹さんが初めて父性を描いていると思う。
・村上作品は、誰かに薦めるポイントが難しい。読む前と読んだ後の立ち位置があまり変わらない。
・村上春樹は書くことによって、自分を出していると思う。自分の批評も見ないらしい。
・村上作品は何かを求めて読むのではなく、コーヒーの香りを楽しむ的な感覚、色々読んで味わいの違いを楽しむみたいな感覚だと思った。
・カタルシスが得られなくても、皆が読む。特殊な才能の持ち主だと思う。その感性があう人が多いのではないか・・・?

などなど、春樹ファンの方たちの熱い意見がたくさんでました。読んでいない人にもその熱は伝わったのではないでしょうか?

●これから春樹作品に挑戦する方へのおススメ本
・ファンタジーな世界は苦手ない方は「アンダーグラウンド」(講談社文庫¥1,080税別)
・一番おススメが「ダンス・ダンス・ダンス 上下」(講談社文庫 上下各¥660税別)
・ファンタジー作品として面白い「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上下」(新潮文庫上巻¥750 下巻¥670 税別)

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