第55回内田樹読書会レポート

11月22日(水)に第55回内田樹読書会を行いました。
課題図書は、今注目度100%の吉野源三郎「君たちはどう生きるか」です。漫画版、文庫版、単行本と種類があり、どれを読んでも良いということで、みなさんの読みやすいジャンルの本を読んできて下さいました。男性5人、女性1人計6人で語りあいました。

★課題図書「君たちはどう生きるか」吉野源三郎 漫画版・単行本版(マガジンハウス)文庫版(岩波書店) 

それではトピックです!

※この本は、1937年(昭和12年)に発行された「日本少国民文庫全16巻」の最後の刊行になったもので、時代は日中戦争が泥沼化していった時代。その時代でも貧困、いじめ、勇気、学問、など現代と変わらないテーマに人間としてどう向き合うのか?を問うた本です。コペル少年とおじさんとのやりとりで当時の人たちがどのような考え方で生きていたのかがわかります。

参加者さんは、漫画版を読んだ方、単行本を読んだ方に分かれていてそれぞれの感想を話しました。漫画版は読者にインパクトを与えるため、単行本で描かれている順番ではなかった。単行本と漫画版は少し離れている気がする。漫画版は、若者にも受け入れられるようにわかりやすく描いてあるのでは?ということでした。
日本の歴史的名著だということを、今回読んで初めて知った方が多かったです。
哲学的エッセンスがあり、「ソフィーの世界」(子供向けの哲学エッセンスの詰まった物語)よりもこの本が面白かったという方もいらっしゃいました。

読んでいると、この時代の15歳の子どもは物事を深く考えるなと思った。
コペル君が色々な出来事に出会い、それをおじさんに報告する。彼が気づいたことについて、おじさんがノートをとっている。それは素晴らしいことだと思うけど、少し自己満足的なところが目立った。

フランス皇帝ナポレオンについての記述が非常に面白かった。ナポレオンの偉大さを改めて知ったような気がする。

いじめっことの対決で、友人との約束を破ってしまい、深く反省するコペル君におじさんがかける言葉に感動した。この心の痛みは経験しないとわからないと思う。
小学生の頃に学校で観た映画に触発され、約束を破り絶交状態にあった友達に謝ったことを思い出しました。など「いじめ」についての章は子供の頃の視点や思い出について話がでました。

おじさんの言っていることに(解釈)に非常に興味を持った。
この時代の中学生でもわかる程度の内容でどこまで答えているのか?
今ある「常識」を疑えと教えていると思う。(徐々に軍国主義に染まりつつある時代)
この本の柱である、貧しさ、生産、消費、活動は共産主義に繋がる言葉。
これらのキーワードはこの時代「タブー」とされていた。しかし、少年向けの本に作者の本当の意図をちりばめ、子どもたちに「生きる」ことを問うていると思います。

80年前に子どもたちに向けて書かれた教養書。今なぜこの本に注目が集まっているのか?
読んでみると、現代にも通じるテーマについて深い考察がなされていて、現代の子どもたち、はもちろん、大人も読むべき本だと気づきました。
人間が生きるうえで大切なことが書かれていると思いました。

以上です。

12月の課題図書は「知の逆転」です。ジャレド・ダイアモンドほか現代の知の巨人たちのこれからの世界を考える内容となっています。

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