超!変化球の警察小説登場!「巡査長真行寺弘道」

今まで読んできた警察小説とはちょっと違う。
警察小説だけれど、探偵小説のような面白さがある。

榎本憲男さんの「巡査長真行寺弘道」。

53歳でいまだに巡査長と言う真行寺弘道。
出世街道からはとっくにはずれ、仕事できないんじゃない?
とツッコミたくなるけど、実は、警視庁捜査一課に
身をおく優秀な刑事。相棒は無く、たった一人で動くタイプ。
上はそれを黙認している。そして直属の上司の命令で
極秘捜査に動く。
趣味はこだわりのスピーカーでソウルやPOPSを聴くこと。

真行寺は、八王子の老人養護施設で、「お孫さん」という
人型ロボットが暴走し死人が出た事件の捜査にあたった。
コンピューターの誤作動なのか?それともプログラムが
何者かによって書き換えられたのか?
捜査の過程で、黒木と言う自称ハッカーと親しくなる。

そんな事件のあと、今度は元警察官僚の議員の
変死事件を捜査することに・・・。
黒木とともに捜査をすすめると、事件の背後に
巨大組織が蠢いていることを突き止める!

警察小説としての面白さを去ることながら、
主人公、真行寺のキャラがとても魅力的。
警察組織では最底辺の立場に身をおきつつ
鋭い推理で事件を追いつめてゆく。
そして、好きなことにこだわる彼の独特の
生き方がとてもかっこいいと思った。

第2弾!ぜひ読みたい。

『巡査長 真行寺弘道』
著者:榎本憲男
出版社:中央公論新社(文庫)
価格:¥820(税別)

鮮やかすぎる推理!「アリバイ崩し承ります」

大山誠一郎さんの『アリバイ崩し承ります』
(実業之日本社)を読みました。

初読みの作家さんです。
この作品があまりに面白かったので
他の作品も読んでみようと思いました!!

時計店を営む若き女性店主が、時計販売や修理で
商いをしながら、なんと!
‘アリバイ崩し’も行うという時計屋探偵小説。

県警本部捜査一課の新米刑事は、時計修理に立ち寄った
その店で「アリバイ崩し承ります」の貼り紙を発見する。

今抱えている事件で、犯人のアリバイがどうしても
崩せない捜査本部・・・。なんとか犯人逮捕の
糸口がみつければ!との思いから、新米刑事は思わず
店主に相談をしてしまった・・・。そして・・・。
事件の経緯を語ったあと、その店主は清々しい顔で
「時を戻すことができました。アリバイは崩れました」
とあっさり言い切った。

ストーカーと化した元夫のアリバイ、
郵便ポストに投函された拳銃のアリバイ、
殺人を告白して死んだ推理作家のアリバイ、
山荘の時計台で起きた殺人のアリバイなどなど・・。
様々な事件のアリバイを目の覚めるような推理で
鮮やかに崩す!

本格推理の王道でもある「アリバイ」に特化した短編集で
どの物語も練りに練られたアリバイトリック。その謎が
解き明かされたくだりを読むと、思わず膝を打ってしまう。

完全犯罪を目論む犯人が仕掛けた鉄壁のアリバイ。
時計屋探偵はいかに崩して見せるのか!
ミステリーファンにはたまらない一冊です。

『アリバイ崩し承ります』
著者:大山誠一郎
出版社:実業之日本社
価格:¥1,500(税別)

メディアの闇に斬り込む!「歪んだ波紋」

『罪の声』があまりに衝撃的過ぎ、
心に残ってしまったので、
『歪んだ波紋』も読みました。

‘誤報’をテーマにした5つの短編集。

何者かの「悪意」によって間違った方向へと導かれる新聞記者。
知らず知らずの内に「誤報」を書かされていた。
自分の書いた記事が全くの「嘘」だったら・・・。
茫然自失で立ち尽くす記者の姿が目に浮かんだ。

新聞、テレビ、ネット・・・ありとあらゆる情報の
洪水の中、アップアップ状態の私達。
自分が好むニュースが本当は全くのでたらめだったら・・・。
感動のニュース報道が実は捏造だったら・・・
そう思うと何を信じていいのかわからなくなる。

この「歪んだ波紋」は、陥れられた記者だけでなく、
毎日ニュースに触れる私達読者にも強烈なメッセージを伝えている。

ず~ッと昔、まだ子供のように無邪気だった20代、
誰かに「新聞は嘘は書かないよ」と言ったら、
人生の先輩に、「新聞は嘘を書くこともある」
と言われ衝撃を受けたことがあった。

その頃から、気が付いている人はきっとわかっていたんだと思う。
情報の中には、真実があるけれど、メイクもフェイクもある・・・と。

だから、「騙されるな、真実を疑え」という言葉が
ズンッと心に響いた。

『歪んだ波紋』
著者:塩田武士
出版社:講談社
価格:¥1,550(税別)

山形が舞台の探偵小説「探偵は女手ひとつ」。

先日、図書館で回遊していた時に思わず
手に取った深町秋生さんの「探偵は女手ひとつ」。

アラフォーのシングルマザー探偵が主人公の
探偵小説です。

会話は全編ご当地言葉。それが何とも癒されるんです。

元は優秀な刑事だった、椎名留美は、
探偵の看板を挙げたは良いが、一向に調査の
依頼は来ず、専ら便利屋の仕事で稼いでいる。
小学生の一人娘を抱えているため、仕事の
選り好みをしている場合ではなく、なんでも
こなすスーパーシングルマザーだ。

しかしアルバイトの合間に、本業の依頼は舞い込む。
だいたいが、元上司からだ・・・。
県警本部は様々な仕事を抱え、人手不足。
やっかいな仕事を留美にまわしてくるのだ。

さくらんぼの盗難事件、スーパーの万引き
監視員の仕事のかたわら、殺人事件に
関する調査、ヤクザからの人探しの依頼、
雪かきのバイト先での不可解な依頼、
友人からの依頼で旦那の浮気調査。
イケメンにつきまとうストーカー退治、
などなど・・・。

地方でも起こりうる事件の闇をあぶり出し、
その事件に翻弄される人間ドラマを
臨場感たっぷりに描き出している。

その物語をさらにリアルに感じさせて
くれるのは、ご当地言葉で交わされる会話シーン。

非情なシーンでもあまり恐ろしく感じないのは
この言葉にあるかも知れない。

『探偵は女手ひとつ』
著者:深町秋生
出版社:光文社
価格:¥1,500(税別)

幻の名著!地域限定復刊!『ディプロトドンティア・マクロプス』

「殺戮にいたる病」「弥勒の掌」など読者の
度肝を抜くミステリーを描かれる、我孫子
さんの原点!幻の名著と言われる
「ディプロトドンティア・マクロプス」
を読みました。

いやはや、とんでもなくぶっとんだ展開に頭が
ついてゆかず・・・。

京都に小さな探偵事務所を開いた私。
そこへ「失踪した父親を探してほしい」
という大学教授の娘と、動物園からいなくなった
カンガルーのマチルダさんを見つけて!
とわけのわからない事を叫ぶ少女の依頼が2つ。
少女が言っていたカンガルーの件が気になり、
動物園に向かった私は、そこで妙な違和感を
感じた・・・。
その後大学教授の行方を探すため、
動き始めたとたん、暴漢に襲われた!。
どうも危険な陰謀に巻き込まれたらしい・・・。

と・・。こんなハードボイルド調のスタートだが、
このあと信じられない展開が待っている!

「怪獣ハードボイルド」とはどういう意味なのか?

驚愕!唖然・・・!絶句・・・・!!!

笑っていいのか?泣いていいのか・・・・。
想像を絶する、とんでもない展開にしびれます!

『ディプロトドンティア・マクロプス』
著者:我孫子武丸
出版社:講談社(文庫)
価格:¥660(税別)

仰天展開のホラーミステリー「祟り火の一族」

今年の夏の異常な暑さ!
こんなときはホラーだ!ということで、
おどろおどろしい装丁に惹かれ、
小島正樹さんの「祟り火の一族」(双葉社)
を読んでみました。初読みの作家さんです。

劇団員の明爽子は、身体中に包帯を巻かれた男に、
怪談を語り聞かせるというアルバイトをやっていた。

「殺したはずの女が甦り、のっぺらぼうが林に立つ。」
「河童、魚人、まだらの妖怪!?」・・・
不気味な怪談を聞き苦しげに唸る男。
彼にとってこの怪談には何の意味があるのか?

男とその怪談事態に興味を持った明爽子は、学生時代の
後輩・浜中刑事と名探偵・海老原とともに捜査に乗り出す。

アルバイト先から出てきた若い男性を尾行してゆくと、
ある廃鉱山に辿りつく。そこでは、連続殺人事件が起きて
いたことが判明する・・・。

海老原の推理により、解き明かされる真実。
そこから浮かび上がる「火に祟られた一族」の宿命。
複雑に絡み合った人間関係と、その一族の愛憎劇に
深い因縁を感じる。

横溝正史に似た世界観と、奇想天外なトリックが
読者を翻弄!
真相解明に至るプロセスは、面白すぎて
止まらない。

また、駐在の巡査になりたくて警察官になったのに
運がいいのか悪いのか?なぜか凶悪事件を解決に
導いてしまう心優しき浜中刑事。そして、
頭脳明晰な名探偵・海老原の魅力が光ります!
彼らの語り口が、暗く哀しい物語を柔らかくしている。

シリーズになっているようなので、続けて読んでいきたい!

『祟り火の一族』
著者:小島正樹
出版社:双葉社
価格:単行本¥1,700(税別)
   文庫¥722(税別)

新展開!?「法医昆虫学捜査官 紅のアンデッド」

大人気警察小説シリーズ「法医昆虫学捜査官」。
最新作は「紅のアンデッド」です。

事件現場に残された、3人の切断された左手の小指。
死体なき殺人事件に、岩楯刑事と新たに組織された
「捜査分析支援センター」の赤堀博士と
プロファイラー・広澤春美が挑む!

古い一軒屋で発見されたのは、3人の切断された
左手の小指と、大量の血痕。

真夏の盛り、岩楯刑事と相棒の鰐川は近所の聞き込みを
続けていた。
捜査本部の方針はとんでもない方向へと向かいつつある。
1ヶ月間、なんの手掛かりもない。捜査は完全に
行き詰まっていた。

新しく組織された、「捜査分析支援センター」で
昆虫学者の赤堀は正式採用となり、さらに
プロファイラーの広澤春美を置いた。

赤堀は、3人の切断された指のうち1本に出現した
昆虫の大きさが違うという。なぜなのか?
ここに大きなヒントが隠されているのではという。
だが、プロファイラーの広澤が出した犯人像は
捜査本部が納得できるようなものではなかった。
しかも、過去に同様の事件がおき未解決に
なっているとの指摘付きだ・・・。

岩楯刑事たちも、二人の分析結果をすべて鵜呑みに
したわけではない。
しかし赤堀がこれまでやってきた昆虫の生態からの
犯人像の割り出しは、成功といって良いし、
広澤の心理学者としての怜悧な分析は、
先の見えない捜査にはプラスにはなるはずだ。

岩楯たちは聞き込みを続けていった結果、
これまでの聞き込みでは出てこなかった
事実に辿りつく。
それは、事件のあった夫婦に関することだった。
その夫婦には秘密があったらしい・・・。

岩楯たちの聞き込みと、赤堀たちの動きで、
人間たちの闇が次第に明らかになってゆく。
その過程が非常に面白い。
人間のエゴが究極の事件を生んでゆく・・・。

また、赤堀の過去が少しずつ明らかになる今作。
あの並外れた明るさと空気の読めなさは
どんな過去から来ているのか?

今回も犯罪現場に蠢く虫たちが事件の真相を暴く!
しかし一筋縄ではゆかない。
さらに、プロファイラーの着眼点も加わり、
面白さが増している。

新たな組織で次はどんな事件と出会うのか?
楽しみです!

『紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官』
著者:川瀬七緒
出版社:講談社
価格:¥1,500(税別)

新感覚のホラーミステリー「呪いに首はありますか」

岩城裕明さんの「呪いに首はありますか」
(実業之日本社)を読みました。

この表紙、インパクトあり過ぎ!ホラー好きなら
絶対に手に取りそう。

久那納家は「久那納家の長子は、三十歳までに必ず死ぬ」。
という不可解な「呪い」をかけられている。
この呪いを解くには、残留思念体=「幽霊」を
ワクチンとして集めることが唯一の方法だという。

二十八歳になった、久那納恵介は、自称「心霊科医」として
相棒の墓麿とクリニックを営んでいる。
そして、多種多様な「患者」の相談を受け、
呪いが解ける日を目指している。

‘‘幽霊の死体’’に困惑する、男性の依頼を受ける。
幽霊の死体って?すでに死んでいるから幽霊だろう・・・?
その意味するところは何?

誘拐された娘を探してほしいとの依頼を受けた恵介。
それは警察に相談した方が良いのでは?
しかし、返ってきた答に驚愕!
「誘拐された娘は幽霊だ」と、母親は言った。

料理好きの夫と離婚し、別の男性と再婚した女性が
夫の変化について語った話が物凄く不気味。
それを取材したテレビ番組のプロデューサーから
話を聞いた恵介たち。彼女から直接話を聞くことに・・・。

犬のかっこうして歩いている男性の幽霊は
ある少年と目があってしまう。
あの子には見えている?それからその男は
少年のそばを離れなくなった。そんな男の幽霊を
描く少年。不気味に感じた少年の母親は
クリニックに相談にきた・・・・。

とても斬新で、不気味で面白い展開の短編集。
あとからじわじわと怖さが身に沁みてくるよう!

そして、久那納家にかけられた呪いは解けるのか?
幕間に挿入された久那納家の呪いの始まりと
解呪の物語。
ラストに用意されたその方法に、
恐ろしさと切なさで胸が苦しくなる。

『呪いに首はありますか』
著者:岩城裕明
出版社:実業之日本社
価格:¥1500(税別)

「浮雲心霊奇譚」シリーズ第3弾「菩薩の理」。

神永学さんの「浮雲心霊奇譚」シリーズ
第3弾「菩薩の理」を読みました。

今回は浮雲さんと八十八さんとの間に確執が
生れてしまいますが・・・。
浮雲さんの八十八さんに対するイライラ感に
ちょっと共感してしまいました。

幕末の混沌とした江戸で怪異事件が続発する!
そんな事件は、一人の「憑き物落とし」が秘密裏に
闇へと葬っていた。その「憑き物落とし」の名は「浮雲」。
白い着物をさっそう(?)と着こなし、
目に赤い布を巻いている。
絶対におかしなかっこうだと思うが、怖くて誰も
突っ込めないだろうと思う。
実は彼は、「死者の魂」を見据える「赤い瞳」
を持っていた。人間はそちらのほうに恐れを抱くのか?
そして、どこへ行っても、俺流を貫く浮雲は、
死んだ者がこの世に遺した想い・・彼らの声を聞く。
それこそが真実!それこそが事件解決の鍵!

「死人の理」
ある呉服問屋に死んだ娘の幽霊が出没した!
さらに棺桶に入れたはずの櫛が見つかり、
娘の墓を掘り返したところ、亡骸が消えていた!?
相談を受けた八十八は早速、浮雲の棲む神社へと向かうが・・。

「地蔵の理」
首なし地蔵で首なし死体が出たとの通報を受けた
八王子千人同心・林太郎は、そこで不気味な死体を発見する。
そこへ、一人の女が現れた。女は「地蔵様が仇をとってくれた」
と狂喜した。その直後青白い光を見た林太郎は幽霊に憑依された!?
近藤勇からの依頼で現地へ向かう浮雲と八十八だったが・・・。

「菩薩の理」
首なし地蔵の事件のあと、またしても怪事件勃発!
今度は、夜毎、無数に現われる赤子の霊におびえる男の依頼だ。
しかし浮雲は彼の依頼を渋る。その姿を見た八十八は
浮雲に対しとうとう怒り心頭となってしまった!
八十八は、一人男の依頼を受けるが、その恐ろしさに絶句!
結局浮雲に助けられることとなった。
そして憑きもの落としに関わった浮雲は、
その背後に妖しげな人物の邪気を察知する!?

邪悪な心を持つ怪しげな人物が暗躍、そして
第1弾から登場していた謎の男「土方」に加え、
今回は近藤勇、無敵の少年剣士、宗次郎も登場する!
(もしかして沖田総司!?) 

新たな展開に益々面白くなるシリーズ第3弾!

『浮雲心霊奇譚 菩薩の理』
著者:神永学
出版社:集英社
価格:¥1,200(単行本)

かっこいい!としか言いようがない「くらまし屋稼業」

大江戸火消小説「羽州ぼろ鳶組」シリーズで
大ブレイク中の今村翔吾さんの新シリーズ
「くらまし屋稼業」を読みました。

主人公のくらまし屋さんたちのかっこいいこと!

浅草界隈を牛耳る悪辣な香具師・丑蔵。その下で
最低の汚れ仕事をさせられてきた、万次と喜八。
2人はそのやくざ稼業から足抜けすべく、集金した
金を持って江戸から逃げる計画をたてた。

うまくゆくはずと思っていたが、丑蔵にばれ、
刺客に追いつめられた。そして二人は高輪の
大親分・禄兵衛のところに逃げ込む。

禄兵衛は丑蔵の情報をすべて聞きだすと、
銭さえ払えば必ず逃がしてくれる男を紹介するという・・。

表の顔は飴細工屋。裏の顔は、誰にも気づかれず、
姿を消したい人たちをものの見事にくらましてしまう、
くらまし屋・平九郎と、その仲間たち!

涙と笑いの人情味あふれる物語にサスペンスタッチの
色付け、さらに手に汗握る殺陣シーン!
文句なく面白い!

「羽州ぼろ鳶組」の熱い心を持つ火消たちとは対照的に
時に冷徹な心をもって悪を斬る、くらまし屋たちの
クールなかっこ良さが際立っている!

第2弾「春はまだか」も近日発売です!

『くらまし屋稼業』
著者:今村翔吾
出版社:角川春樹事務所(ハルキ文庫)
価格:¥640(税別)