警察も唖然!名探偵のシニアたちの活躍!「木曜殺人クラブ」

英国で最速、100万部を突破した
リチャード・オスマンのデビュー作
「木曜殺人クラブ」(早川書房)を
読みました。

デビュー作がいきなり、全英図書館賞の
年間最優秀著者賞を受賞、さらに、ミステリ界の
最高権威である、エドガー賞最優秀長編賞を受賞。
そのほか、数々の輝ける賞を受賞している。

イギリスの引退者用施設・クーパーズ・チェイス
に未解決事件の調査をして暇をつぶす老人グループ
〈木曜殺人クラブ〉があった。
警察官にしてみれば、とんでもない話だ。
管轄の担当警官・ドナ巡査は困惑する。

その老人グループには元警察官だった
人物が持ち込んだ未解決の事件ファイルが
あり、エリザベスを中心に木曜日に
集まりファイルを吟味していた。

その頃、クーパーズ・チェイスの敷地内の
墓地と庭園を開発して新たな棟を建てるという
計画が持ち上がり、住民たちが反対していた。

そんな最中、建設業者のトニー・カランと
いう男が殺害された。
エリザベスたちはこの事件をきっかけに
真相究明に乗り出すことになるが。

ミス・マープルも真っ青の推理を繰り広げる
老人グループの面々。
そのクラブに無理やり引き入れられた若き警察官も
翻弄されっぱなしだ。
何といっても、この老人たちの驚愕の働きに唖然!
行動力、洞察力、推理力が抜群。

何しているの?若い警察官たち!と思わず
ツッコミを入れたくなる。

人生の終盤が訪れた老人たちの波乱万丈な
歴史も描かれ、ちょっと切なくなる。
しかし、その部分があればこそ、この物語は
謎解きの面白さだけでない、深みが加味
されている。

エリザベスたちに無理難題を吹っ掛けられる
ドナ巡査とクリス・ハドソン主任警部。
悩みながらも彼女たちに協力してしまう・・・。
なんとなく、彼女たちを憎めない。
そんな微笑ましいシーンもあったりする。

とても楽しく読めた、新人なのに完成度が
半端ないユーモラスな謎解きミステリ。

『木曜殺人クラブ』
著者:リチャード・オスマン著/羽田詩津子訳
出版社:早川書房
価格:¥2,310(本体¥2,100+税)

戦慄の展開!!「時計仕掛けの歪んだ罠」

「靄の旋律 国家刑事警察特別捜査班」の
著者、アルネ・ダールの「時計仕掛けの歪んだ罠」
(小学館)を読みました。

スウェーデンでベストセラーのクライム
ノベル。これはただの警察小説ではない。
どんでん返しが半端ないサスペンス。

1年7か月の間に3人の十五歳の少女が失踪した。
ストックホルム警察犯罪捜査課の
サム・ベリエルは同一犯の連続殺人
と主張する。
しかし、彼の上司、アラン・グズムンドソンは
サムの主張を否定する。

サムは目撃者の通報を受け、現場に駆け付けた。
そこには罠が仕掛けられ、捜査班の一名が負傷!
それでも同僚とともに現場を捜索。
しかし、そこはもぬけの殻だった。
確かに誰かを監禁した痕跡はあるのだが・・・。

サムがこれまで捜索した三つの現場。
それらの現場写真に写っている人物の存在。
サムはこの人物が犯人ではないかと疑う。
そしてついに特定し、容疑者確保に動いた。

サムは、早速容疑者尋問を始めるが・・・。

思わずどうなっていると頭に?マークが
巡る展開。
いきなりの反転!ベリエルが一転容疑者に!?
しかし、それも「罠」なのか?
誰が味方か?敵はいるのか?
緻密に張り巡らされた罠にベリエルと
同様に読手もとことん翻弄される。

果たして、少女たちは助かるのか?
真犯人の目的は何なのか?

北欧独特の社会問題を背景に、戦慄の
展開が繰り広げられる!

あまりにも衝撃的ラストに絶句!

シリーズ第2弾「狩られる者たち」を
早く読まないと!

『時計仕掛けの歪んだ罠』
著者:アルネ・ダール著/田口俊樹訳
出版社:小学館
価格:¥1,210(本体¥1,100+税)

あまりにも意外な真相に驚愕!「見知らぬ人」

エリー・グリフィス「見知らぬ人」(創元推理文庫)
を読みました。
アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長編賞
受賞作。

主人公の女性の周りで不可解な事件が続く。
怪しげな人物が多数登場。
一体誰が犯人なのか?

クレア・キャシディは、中等学校タルガ―ス校の
英語教師で、作家ホランドの研究もしている。

10月のある日、クレアは親友でおなじ英語教師
のエラが自宅で殺害されたことを知る。

その現場には、「地獄はからだ」と書かれた
謎のメモが残されていた。
その言葉は、ホランドのホラー短編
「見知らぬ人」に繰り返し出てくるフレーズだった。

これは、作中作「見知らぬ人」の見たて殺人なのか?

クレア、刑事・バービンダー、クレアの娘・ジョージア。
3人それぞれの視点で事件の詳細が語られてゆく。

作中にたびたび登場する「見知らぬ人」の
文章。それが何を意味するのか?
謎が謎を呼び、どんどん迷い込んでゆく。

そして、後半はサスペンス色が強くり、
ハラハラする展開にページをめくる
手が止まらなくなる。

一体、犯人は誰なのか?全く見当がつかない。

意味深な作中作で惑わされ、
殺害現場に残された不可解な
メッセージが真相解明を阻む。

さらにラストに待ち構える衝撃と
戦慄の展開に背筋が凍る!

犯人当ての醍醐味がこれでもか?と
堪能できる衝撃作。

『見知らぬ人』
著者:エリー・グリフィス著/上條ひろみ訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,210(¥1,100+税)

探偵小説に新たなヒーロー登場!「IQ」

日系アメリカ人のジョー・イデが生み出した
魅力的な青年探偵、アイゼイア・クィンターベイ、
通称「IQ」。

ロスアンゼルスに住む黒人探偵。
高校生の時、目の前で愛する兄の
事故死を目撃。
そのトラウマを抱えつつ、探偵業を営む。

ある理由で大金が必要になった
IQは、腐れ縁の相棒・ドットソンの
口利きで、大物ラッパーから仕事を
請け負うことになった。

極度のスランプに陥り、自分の殻に
閉じこもって自堕落な生活を送る
大物ラッパー・カル。
ある日、巨大な闘犬・ピット・プルに
襲われた。
そして、IQたちにその犬を使う殺し屋を
探し出して欲しいという異常な依頼してきた。

IQは、そんな途方もない依頼を全力で追う。

IQにとって兄の言うことは絶対だった。
兄を失った今も時々言葉を思い出す。
それに従って生きてきたIQは、
自分なりの正義を秘めていた。

カルの部下やプロデューサーたちは、
そんなことはカルの妄想だから適当に
調査して終わりにするようにIQに
提案するが、IQはNOを突き付け
調査を続行する。

子どものころから頭脳明晰だった
IQは鋭い洞察力と捜査方法で
真実に近づいてゆく。

ロスの黒人コミュニティが舞台。
さらに生粋の黒人ギャングと
ヒスパニック系ギャングの抗争を背景に
アクションシーンあり、まるで
映画のようにスピーディーな展開が
この作品の魅力。

その中でもストイックに生きるIQの
姿が胸を打つ。

コナン・ドイルをこよなく愛する著者。
そのリスペクトが本作品中にも登場する。

シリーズ第2作「IQ2」も発売中!

『IQ』
著者:ジョー・イデ著/熊谷千寿訳
出版社:早川書房(文庫)
価格:¥1,166(¥1,060+税)

クリスティデビュー作で、ポアロ初登場作品「スタイルズ荘の怪事件」

高校生時代、アガサ・クリスティが
好きで読んでいた。
でも、超有名な作品しか読んで
いなかった。(映画化作品寄り)

それでアガサ・クリスティを久々に読んだ。
創元推理文庫で新訳が発売されたから。
クリスティのデビュー作でポアロ初登場の
「スタイルズ荘の怪事件」。
なんと、この作品は未読だった!

イギリスの片田舎にある「スタイルズ荘」の
女主人が毒殺された。
療養休暇中のヘイスティングスは、旧友に
誘われ、「スタイルズ荘」に滞在していた。
毒殺された女主人というのは、旧友の継母だった。

夫の遺産で血のつながらない二人の息子を
慈しみ育てた。多少性格に難はあったが、
周囲の人に気を配れる、優しい人だった。

ところが、最近になって20歳も年下の
男性に恋をし、周囲の反対を押し切って
結婚してしまった。
誰の目にも明らかに財産目当てに映っていたので、
夫が女主人を毒殺したのだと誰もが思った。

ヘイスティングスは、偶然にもベルギーで
優秀な警察官だった、エルキュール・ポアロと再会する。
そして、この毒殺事件の捜査を旧友に依頼させた。

殺人に使用された毒はストリキニーネ。
誰がいつどのようにして飲ませたのか?

事件現場に残っていた様々な遺留品。
粉々に砕けたコーヒーカップ、
燃やされた遺言状、
そして、事件前の誰かとの諍い。
周囲の人間の証言から、ポアロは
事件の真相に繋がるピースをはめ込んでいく。

ヘイスティングスはポアロが一人で何やら
調べているのが気に入らない。
自分の推理をポアロに話しても全く
取り合ってくれない。
ポアロに、どうしてわからないのですか?
ヒントはそこにありますよ。
と言われても全くわからない。
そんなヘイスティングスの不満は読んでいる私たちも感じる。
一体どこまで調べがついているんだよ~
と突っ込みをいれたくなる。
ヘイスティングスの迷ワトソンぶりが面白い。
しかし、ポワロはヘイスティングスの
何気ない言葉から、事件の真相にたどり着くのだ。

ポアロの灰色の脳細胞が冴えわたる!
最高のデビュー作。
もう一回読むと別の意味が浮かび上がるらしい。
再読必至!

訳者は、あのアンソニー・ホロヴィッツ
作品の訳を担当した、山田蘭さん。
海外小説にある、独特の言い回しを
とても美しい日本語でわかりやすく翻訳。
それでいて、海外ミステリーの雰囲気を
壊していない。

読みやすさと面白さでいっき読み。

『スタイルズ荘の怪事件』
著者:アガサ・クリスティ著/山田蘭訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥968(本体¥880+税)

ラストに唖然!長編海外ミステリー「瞳の奥に」

ニューヨークタイムズベストセラー
ランキング1位に輝いたミステリーの
翻訳本「瞳の奥に」が発売中です。

海外大物ミステリ作家からも絶賛の嵐!

一人の男性を巡って起こる二人の女性の愛憎劇!?

一人は男性の妻・アデル。
もう一人は、男性の部下で愛人となるルイーズ。

しかし、ルイーズは妻のアデルとも
友情関係になってしまい、罪悪感を
感じながらも男性との不倫を解消する
ことができず悩み苦しむ。

さらに、女性二人は同じ病気を患っていた。
それは「夜驚症」。一種の精神疾患。

物語はアデルとルイーズ、二人の目線で
語られ、間に「かつて」という章が登場。
それはアデルの過去が語られる。

物語を読み進めると次第に微妙な違和感を感じてくる。
それが何なのか?何が起こっているのか掴み切れない。
何かとんでもない秘密が隠されているような雰囲気が
漂っている。そして、読者は翻弄され続ける。

その微妙な違和感の正体が徐々に明らかになるに
つれ、恐ろしい真実が見え隠れしてくる。

そして、クライマックスは予期せぬ結末どころの
話ではない!言葉では言い表すことのできない
ほどの衝撃が襲う!想像を超えたラストに絶句する!
こんな結末誰が予想できるだろう!?

このラストを創り出した著者の発想力が
凄い!絶対に誰にもわからない!

約500ページ強の大長編、ロマンスが絡んだ
サスペンスミステリー。
しかし、翻訳が非常に良く、アップテンポで
読める。読みだしたら止まらない!

大長編だということを忘れるくらいの
面白さだ。

『瞳の奥に』
著者:サラ・ピンバラ著/佐々木紀子訳
出版社:扶桑社(文庫)
価格:¥1,250(税別)

海外サスペンスの醍醐味!「パーキングエリア」

ツイッターのTLで紹介されていた
テイラー・アダムスの「パーキングエリア」
(東京創元社)を読みました。

久々に海外サスペンスの醍醐味を
味わいました。

女子大生のダービーはクリスマスイブの前夜、
姉から「母、危篤」の知らせを受け、
大雪の中車を飛ばし母の元へ向かう。

しかし、天候は悪化し車は動かなくなった。
仕方なく途中のパーキングエリアで様子を
見ることにした。

立ち寄ったパーキングエリアには
すでに4人の男女が悪天候で
足止めを食らっていた。

ダービーは母のことが心配で、携帯が
繋がるところはないかと外に出た。
しかし、アンテナは立たずあきらめて
室内に入ろうとした時、偶然1台の車の中
に少女が監禁されているのを目撃してしまう。

この中に誘拐犯がいる!?
誰なのか?
天候は悪化の一途を辿り、誰もが
このパーキングエリアに留まるしかない。

少女の監禁を知ったのは、ダービー一人。
携帯は繋がらず、夜明けまで救援は
見込めない。頼れるのは自分だけ!
自分一人で助け出すことは出来るのか?

少女を助け出す!ただその一念。
ダービーの勇気には頭が下がる。

そして、狂気の誘拐犯の執拗さが
人間の恐ろしさを倍増させている。
海外サスペンスの面白さは、犯人が
禍々しいほどに恐ろしく描かれて
いることだと思う。

猛吹雪の夜、極限状態の中で
繰り広げられる、手に汗握る
ノンストップサスペンス!

サスペンスにふさわしい
スリリングな翻訳で読みやすく
とても面白かった!

『パーキングエリア』
著者:テイラー・アダムス/東野さやか(訳)
出版社:早川書房(文庫)
価格:¥1,080(税別)

ミュッソ、最大の衝撃作!「作家の秘められた人生」

「ブルックリンの少女」
「パリのアパルトマン」の2作品
を読んですっかりミュッソ作品が
好きになり、最新刊「作家の秘められた
人生」を読みました。

読みながら、あまりの展開に
どうなってるの?これ・・・と
思わずつぶやいてしまった。
マジ・・・。前作2作を超す衝撃作。

世界的な人気作家、ネイサン・フォウルズは、
20年前に断筆を宣言して以降、いっさいの
創作活動を辞め、地中海の島に隠棲した。

文学青年のラファエルは、自分の作品を
読んでもらおうとフォウルズを
訪ねるが、銃で威嚇されてしまう。
しかし、それでもあきらめなかった。
ラファエルは、オディベールが
経営する島の唯一の書店でバイトを
しながら、フォウルズとの接触の
機会を狙っていた。

新聞記者のマティルド・モネーは、
ある計画を持って、フォウルズに
接触を試みていた。

同じ頃、島の浜辺で女性の惨殺
死体が発見され、島が封鎖される
という非常事態に陥る。

この作品の最大の謎は、人気作家
が突然断筆したのは何故か?だ。

また、新聞記者・マティルドは
執拗にフォウルズに執筆依頼を繰り返す。
いったい何を書かせたいのか?

前半は、彼らの現在進行中の出来事、
過去の事実のエピソードが描かれる。
バラバラな印象で関係性は見えてこない。

しかし、物語の中盤から終盤にかけては、
彼らの謎解きに向かって一気に加速する。
それは、驚愕と衝撃の連続だ。

さらに、二転三転を繰り返した先に
待っているのは、全く予想もしないラスト。
まるでイリュージョン!!!

ミュッソの作品はクセになる。
読んだら絶対にはまってしまう。

『作家の秘められた人生』
著者:ギヨーム・ミュッソ著/吉田恒雄訳
出版社:集英社(文庫)
価格:¥980(税別)

話題の探偵コンビ再び登場!!「その裁きは死」

一昨年、様々な海外のミステリーランキングで
7冠を達成した「カササギ殺人事件」。
衝撃的面白さでミステリーファンを狂喜させた。

さらに、ホロヴィッツ自身が作品に登場
し、元刑事の偏屈探偵・ホーソーンと
コンビを組んだ「メインテーマは殺人」。
この作品も昨年ミステリー業界に旋風を
巻き起こした。
誰もが、このコンビの続編を待ち望んだ!

そして9月!ホロヴィッツ&ホーソーン
コンビが「その裁きは死」で再び登場!
ひゃ~待ってました!!!

ホロヴィッツは、自身の脚本のドラマ撮影
に立ち会っていた。本番撮影中、無遠慮に
タクシーが止まりホーソーンが降りてきた。
ホロヴィッツは彼の無神経さに怒り心頭!
ホーソーンはそんなことおかまいなく、
ホロヴィッツを無理やり事件に巻き込んだ。

離婚専門の弁護士リチャード・プライス
が殺害された。
被被害者は、自宅で顧客から贈られたワイン
の瓶で頭を殴打された後、割れた瓶を喉に
突き立てられて死んでいた。
現場の壁には乱暴に描かれた数字「182」。
被害者が殺される直前に残した謎の言葉。

被害者は不動産業者の離婚した元妻と
資産分配について揉めていた・・・。

早々に犯人と思しき人物が登場するが、
二人が関係者に聴取してゆくと、疑わしい
人物が次々と現れ、複雑な様相を呈してくる。

そして、いつものことながらホーソーン
は秘密主義を通し、ホロヴィッツは彼に
翻弄され続ける。
その間、ホロヴィッツは事件を担当する
女性警部に脅されスパイになれと強要されたり、
大変な思いをすることになるのだ。

緻密に配置された数々の謎。
それらが徐々に回収され事件の輪郭が
浮かび上がった時、予想をはるかに
上回る真実に唖然とする!

周囲の空気を全く読む気がない「超」
KYだが、卓越した推理力で事件の真相を
暴く探偵・ホーソーンとミステリドラマの
人気脚本家でありながら、自虐と思わせる
ほど作中で無能さをアピールするホロヴィッツ。
この魅力的なコンビの活躍にはまる!
最高級の面白さで迫る犯人当てミステリーの
傑作!

次の作品があれば、早く読みた~い!

『その裁きは死』
著者:アンソニー・ホロヴィッツ著/山田蘭訳
出版社:東京創元社(文庫)
価格:¥1,100(税別)

前作を凌ぐ面白さ!「パリのアパルトマン」

ギヨーム・ミュッソの「ブルックリンの少女」が
あまりにも面白かったので、次作
「パリのアパルトマン」も読みました。

「ブルックリンの少女」を凌ぐ面白さ!
2作続けて読んで、気がついたこと。
海外のミステリー作品は謎解きのあと
主人公たちはこのあとどうなったんだろう?
ともやもやしたラストが多いような気がしたけれど
ギヨームの描く作品は、事件後の主人公
たちの物語も描かれていてすっきりします。

クリスマス間近のパリで偶然出会った男女。

男はアル中気味の著名な劇作家・ガスパール
集中して脚本の案を練るために、急死した
天才画家・ローレンツのアトリエにやってきた。

女はイギリス人の元刑事・マデリン。
疲れ切った心を癒すために、ローレンツの
アトリエを探し出した。

そこで二人は鉢合わせをする。

マデリンは、ダブルブッキングについて
アトリエの管理人で画廊オーナーに
さんざんクレームを入れていたが、
急死したローレンツに興味を抱く。
画廊オーナーはマデリンの以前の仕事を
知るとある依頼をする。

それは、画家が死の直前に描いたとされる
未発見の遺作三点を探し出して欲しいとの
依頼だった。

マデリンは、ローレンツのアパートの
賃貸権をガスパールに譲り、自分は別の
場所で過ごすことを決意。

画廊のオーナーから依頼された件を
ガスパールに話すと興味を持ち、二人は
ローレンツの遺作三点を捜索することに!

その捜索は、やがてローレンツの過去と彼を
襲った悲劇、そして死の間際の彼の不可解な
行動を辿ることになる・・・。

急死したローレンツの思いが残った絵。
その絵に隠された秘密に導かれ、たどり着いた
二人を待ち受けていたのは、運命の
いたずらとしか言いようのないあまりにも
予想外の真実だった・・・・。

画家ローレンツの絵に隠された秘密から
とんでもない真実にたどり着いてゆく
過程は非常に面白い!

それに輪をかけてこの作品を面白く
しているのは、マデリンとガスパールの
強烈な個性のぶつかり合いだ。

仕事でたくさんの悲劇を目の当たりにし、
愛する人と結ばれず、孤独に泣く
マデリンはなんとしても自分の子どもが
欲しいと望み、婦人科医のもとへ通っていた。
本当は、ローレンツのことなどどうでもよい!
と思っていた。
かたや、著名な劇作家でありながら、
行き詰っていたガスパールは、なぜか
画家の遺した絵のメッセージから、真実を
突き止めることが使命のように思い
執拗にマデリンに協力を依頼する。
マデリンにこけにされても殴られてもだ。

読んでいて、マデリンとガスパールの物語の
渦中に放り込まれたようなリアルさを感じた。

映画化されたらきっとヒットするのにな。

この2作品ですっかり、ギヨーム・ミュッソに
はまってしまった。

次回作が待ち遠しい~。

『パリのアパルトマン』
著者:ギヨーム・ミュッソ/吉田恒雄訳
出版社:集英社(文庫)
価格:¥1,150(税別)