息詰まる心理戦!新感覚のスパイ小説「裏切りの晩餐」

以前は海外のミステリー小説をよく読んだ。
東西の冷戦時代を舞台にした、スパイ小説が結構面白かった。
スパイ小説というと、フレデリック・フォーサイスや
ジョン・ル・カレが有名。

この「裏切りの晩餐」の著者、オレン・スタインハウアー氏は
ジョン・ル・カレに続く若手作家ということで、非常に評価が高いとのこと!

読んでみました!

晩餐

カリフォルニアのレストランで、CIAのスパイだった、
ヘンリー・ぺラムは、5年ぶりに元同僚で恋人だった、
シーリア・ファヴローと再会を果たす。
シーリアは、すべての過去を捨て結婚。二人の子どもを授かり
幸せな生活を送っているようだった。

二人は美味しい料理とワインで、5年ぶりの再会を楽しみ、
話が弾んでいた。
ヘンリーはまだ独身。シーリアと再会しもしかしたら
お互いの気持ちがまた一つになることがあるだろうか・・
と想像してみたりした・・・。
だが、シーリアの姿を見たとき、申し分無い人生を
送っている余裕が感じられ、ヘンリーの淡い期待は
見事に裏切られた。

だが、そんな友好的な二人も、CIA時代に起きた
ウイーン国際空港テロ事件の話に及ぶといっきに
緊迫し始める!
お互いの胸の内を探り合う、心理戦へと突入する。
レストランでの心理戦の合間に、現在と過去が
交互に描かれ次第に真相へと近づいてゆく・・・。
その事件の時、ヘンリーたち工作員は誰がどう動いたのか?
まさに手に汗握る展開、先へ先へと読み進めたくなるような
はやる気持ちが止まらない・・・。
そして、あまりにも意外で衝撃的なラスト!!

読み終わった時に「はあ~」と思わず漏れたため息。

物語の全てはレストランでの晩餐に焦点をあてている。
スパイ小説にありがちな派手な銃撃戦や、カーチェイスの
シーンなど一切ない。
そう!シーリアとヘンリーの緻密な内面描写があまりにも見事で、
二人の息詰まる心理戦だけで、最高級の面白さを感じさせてくれた。

斬新過ぎるスパイ小説の傑作です。

『裏切りの晩餐』
著者:オレン・スタインハウアー/上岡伸雄(訳)
出版社:岩波書店
価格:¥1,800(税別)