レトロなユーモアミステリー。仁木悦子の『仁木兄妹』シリーズ

今回は仁木悦子著『私の大好きな探偵 仁木兄妹の事件簿』(ポプラ社文庫)を紹介します。
著者は、第3回江戸川乱歩賞を受賞しミステリー作家としてデビューしました。
当時は『日本のアガサ・クリスティ』と呼ばれた、大変な人気の女流ミステリー作家で、女流ミステリー作家の草分け的存在。
著者と同姓同名のヒロインが活躍する『仁木兄妹』シリーズが話題となりました。
のっぽで植物が大好きの兄・仁木雄太郎とポッチャリ体型で好奇心旺盛な悦子。二人は推理マニア。二人が行くところ事件あり。
レトロでほのぼのした昭和を舞台に描かれたハートフル・ユーモアミステリー。
本書『は、昭和30年代~40年代に発表された、『仁木兄妹』が名推理を披露する5編を収録しています。

第一話の『みどりの香炉』は、兄妹が中学生のときのお話。
叔父さんの家に泊まりに行った二人は、夜、叔父さんが大切にしていた「みどりの香炉」が何者かに盗まれた事件に出会う。犯人の残した足跡から推理を展開!
第二話『黄色い花』は、ヨーロッパ外遊中の友人宅の留守を守っていた、仁木兄妹。隣に住む男性が殺害される事件に巻き込まれる!好奇心丸出しの二人!殺害現場に残された黄色い花から、兄・雄太郎が名推理を!
第三話『灰色の手袋』は、クリーニング店から雄太郎が間違えてもらって帰った悦子のコート。しかしそれが殺人事件へと繋がってしまった。クリーニング店の炊事婦は、何故殺されたのか?現場近くに捨てられた手袋が事件の鍵を握る。
第四話『赤い痕』は、仁木兄妹が久しぶりにばあやの里に遊びに行った。そこでは女性の遺体が川で発見され大騒ぎになっていた。ばあやの息子はその村の警察官。どうも犯人にめぼしがついているらしいが、二人は話を聞いていく内に違和感を感じる・・・・。兄妹がばあやのために粋な計らいをするエンディングがとても良い。
第五話『ただ一つの物語』は、悦子が結婚し子どもをもった頃のお話。
友人が悦子の息子のために描いてくれた絵本。ある日新聞の伝言板欄にその絵本を譲って欲しいとの投書を発見。悦子はその投書に不審を抱き、新聞社に連絡を取る。
寝たきりだった友人は、前年に突然体調が急変し亡くなっていた。悦子はその友人の死にも不審を抱き、新聞社に勤める夫のコネを使って独自に調査。次第に絵本に隠された重大な秘密が明らかになる・・・。
などなどどれも大変面白いです。
昭和30年代~このようなミステリ小説があったこと驚きました。
今読んでもミステリー作品として、大変優れていると思います。しかもとても面白いです。かなり凝った趣向がふんだんに使われ飽きない短編ばかりです。ほかの作品も読んでみたいと思いました。

『私の大好きな探偵 仁木兄妹の事件簿』
著者: 仁木悦子
出版社:ポプラ社
価格:¥560(税別)