今度の捜査は命懸け!?『特捜部Q カルテ番号64』

デンマークの大人気警察小説シリーズ「特捜部Q」。
シリーズ第一弾「檻の中の女」第二弾「キジ殺し」の
二作品はすでに映画化され、本国デンマークでは大ヒット!
第三弾「Pからのメッセージ」も映画化されるだろうと思う。

このシリーズは、迷宮入りとなっている事件を、
コペンハーゲン警察のやっかいものだが超優秀なカール・マーク警部補他、
謎めいたアラブ人アシスタントのアサド、多分、多重人格が疑われる
女性アシスタント・ローセの三人がとことん捜査し真相を解明してゆく警察小説。

そしてシリーズ第四弾は『特捜部Qカルテ番号64』。

特捜部Qカルテ上
特捜部Qカルテ下

1980年代に起こったナイトクラブのマダムの失踪事件。
アサドとローセがこの事件を調査すると、ほぼ同時期に
5人もの行方不明者が出ていることが判明する。
カール・マーク警部補らは、大事件の可能性があると
判断し、本格的に捜査を開始した。
やがて、壮絶な過去を持つ一人の老女と新進政党の関係者が
浮かび上がってきた・・・。

1985年、一人の女性が失意のどん底にあった。
ある人物によって、不妊手術を施された女性は
愛する夫にその事実を知られ、夫から離婚を
迫られた!だが車内で言い争いをした時
交通事故を起こし夫が亡くなってしまう。

不幸のどん底に突き落とされた女性は、自分を
このような目に合わせた人物とその関係者に
復讐する計画を立てる・・・・。

1950年代、スプロー島には、‘ふしだら’あるいは‘軽度知的障害’
という理由だけで社会から排斥された女性たちを収容する‘監獄’があった。
島を出るには不妊手術を受けなければならない。
その制度に乗っかり、優生保護法を武器に次々と
不妊手術を繰り返す一人の婦人科医。
やがて、極度の選民思想を持つ、危険な思想集団の
トップに上り詰め、極右政党を立ち上げる。

カール・マーク警部補らは、失踪事件を追ううちに
この極右政党に突き当たる。
そしてアサドとローセはその中核へと迫ってゆく。

物語は、カール達が失踪事件を追う現代の物語と
女性の壮絶な過去の物語が交互に描かれる。
そして二つの物語は最後に一つとなり真相へと繋がってゆく。

スプロー島の収容所の壮絶な物語は現代から言えばありえない事実。
これほどの過去があるならば、復讐したいと思うだろう。
その理由に納得してしまうくらい酷い過去だ。
事実に基づく物語であるために説得力が半端ない。

そして、3人のチームワークは巻を重ねるたびに深くなってゆく。
今回は、極右政党の秘密を探る内にアサドが命の危険に
さらされる!それを悲しむローセの優しさに胸を打たれる。
色々と軽口をたたいている3人だが、すでに固い絆、
信頼関係で結ばれているようだ。

シリーズ4作目にして、最高傑作と言って良いと思う。
とても面白く、また悲しく切ない警察ミステリー。

『特捜部Q カルテ番号64』
著者:ユッシ・エーズラ・オールスン著/吉田薫訳
出版社:早川書房(ハヤカワ文庫)
価格:上下各¥780(税別)