幻の名作!究極のホラーミステリー「血の季節」

この度、幻の名作として復刊された『血の季節』の著者は
あの名作ミステリー『弁護側の証人』の著者、小泉喜美子さんだ。

『弁護側の証人』は、強烈な大どんでん返しで、
古今の読者の度肝を抜いた法廷ミステリー。
これの初出は、昭和38年。著者のデビュー作でもある。
小泉さんはこのあと、女流ミステリー作家として活躍!
さらに、海外のミステリ作家(P・Dジェイムズなど)
の作品の翻訳も手がけた。

『血の季節』はなんと、吸血鬼伝説がテーマになっている
ホラーミステリーだ。
ホラーと言ってもそれほどの恐ろしさは無く、
むしろ、切なくなると言った方が良いかも知れない
女性ならではのタッチが素晴らしく、格調高い。

血の季節

昭和五十×年、女児殺害の容疑で一人の男が逮捕された。
男は、まじめで知的、凶暴な面はなく、罪を逃れる
ために嘘をついたりしない、物静かに刑の確定を
待っていた。男の弁護士は何とか死刑だけは
免れさせてやりたいとの気持ちで、精神科医の権威に
男の再鑑定を依頼した。
弁護士は「どうもどこか正常ではないと思われるのに
どこがどう正常でないのか説明がつかず、医学的にも
法律的にも実証し得なかった」と言った。

そんな男に興味を持った精神科医は、その男が語る物語を静かに
聞きはじめる・・・。
40年前、男が小学生だった頃、ある国の公使館で金髪碧眼の
兄妹と交遊した非日常の想い出。
美しくはかなった彼らの母の死、そして、その母に
想いを寄せた、公使の部下。
やがて中学生になった男は、成長する友の妹の美しさに
惹かれ始める。だがある夏、彼らは避暑に出掛けたきり
帰国したらしくその後二度と逢うことが出来なかった。

戦争中に青年期を過ごしたと男は、奔放な友人の話に
はっとする。
友人は、男が子供の時通いつめた公使館の前を通ったら、
白い服の女性に抱き着かれ、いきなり首筋をかまれたという。
男はその友人に激しい嫉妬を感じた。
しかし、その友人は空襲で焼け死んでしまう・・・。

彼の語る物語は、狂気に満ちていた・・・・。
一体どこまでが本当なのか?それともすべて幻想なのか?
やはりこの男は頭がおかしいのか・・・?

男が語る物語があまりにもミステリアスで幻想的!
怪しい魔力に満ちていて、とても面白い!!
吸血鬼伝説をものの見事に現代の犯罪と結び付け、
さらに社会派の事件として描いた!
まさに、「吸血鬼+サイコパス+警察小説」(恩田陸)!

1982年に発表され、復刊希望が相次いだ、
幻の名作と言われたホラーミステリーの大傑作!復刊。

『血の季節』
著者:小泉喜美子
出版社:宝島社(文庫)
価格:¥660(税別)