本当に邪悪なのは誰・・?「邪悪な少女たち」

海外のイヤミス界に新星登場!?とあとがきで紹介されています!
アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞を受賞した
アレックス・マーウッド『邪悪な少女たち』。

「言葉にならない結末 圧倒的、哀しさ」という帯の文言に
惹かれ思わず手に取りました。

読み終わった後、なんと切ない・・・なんと苦しい、
こんな結末があるのか!?とやりきれない思いになってしまいました。

邪悪

11歳の時、4歳の少女を殺害した二人の少女、アナベルとジェイド。
アナベルは裕福な家で育ち、名門学校に通っていた。
片やジェイドは貧困家庭に生れ、読み書きができない。
そんな二人は偶然出会い、悲劇に見舞われたのだ。
だが、二人は前代未聞の邪悪な少女たちのレッテルを
貼られ、親兄弟たちからも見捨てられる・・・。
そして二人は、別々の矯正施設へと送られる。
やがて、成長した二人はそれぞれ別の人生を歩むことになる。

アンバーは遊園地の清掃部の責任者で、恋人と同居中。
清掃部の部下とも円満。毎日の出来事の中で多少不満はあるが
過去を鑑みると、充分幸せと言えた。
一方、カースティは新聞記者。愛する夫・ジムと二人の子どもたちに
囲まれ充実した日々を送っている。
時に、記者仲間と飲み過ぎ、夫に怒られて自己嫌悪に陥ることはある。
失業中の夫にこれ以上心配事を増やさないように断酒を誓う日々だ。

ある日、アンバーが働いている遊園地で少女の変死体が発見された!
第一発見者は、アンバーだ。
だが、アンバーは発見者になるのを極度に恐れた。
また、同じ頃、アンバーの部下で美人のジャッキーが
ストーカーに付きまとわれていた。
そんなジャッキーをアンバーは自宅に匿うことに。
しかし同居するアンバーの恋人・ヴィックはあまり良い顔を
しなかった・・・。

新聞記者のカースティは、この少女殺害事件を取材するために
遊園地へ赴く。
そして、そこでアンバーと出会ってしまったのだ!

二度と会ってはならない二人が少女殺害事件を機に再び出会ってしまった!

過去を捨て、別人として生き直していた二人。
過去は絶対に誰にも知られてはならない。
宿命を背負った二人にやがて再び訪れる悲劇。
悲劇へと向かう二人の女性の心の葛藤!
その心理描写には舌を巻く。
彼女たちの鼓動、吐息、慟哭が手に取るようにこちらに伝わってくる・・・。
そして二人の過去の物語は、衝撃的な少女二人の逮捕劇から
始まり、やがてなぜ4歳の女児を死なせることなったのか?
が巻き戻されて真相に繋がってゆくのだ。
二つの悲劇がひとつに重なった時、さらなる悲劇を呼ぶ!

つらい、苦しい、罪を犯したものは絶対に許されない!
そんな著者の叫びが聞こえてきそうなほど胸を締め付けられる!

このイヤミスを読むには相当の覚悟がいりますよ。

『邪悪な少女たち』
著者:アレックス・マーウッド著/長島水際訳
出版社:早川書房(ハヤカワ文庫)
価格:¥1,100(税別)