「しゃばけ」の畠中恵さんが描く現代ものユーモアミステリー!

大人気「しゃばけ」シリーズの畠中恵さんの貴重な現代もの短編集です。
内容は、ユーモアミステリー。
殺人事件のような怖いお話しではなく、身近に起こるちょっとした事件をユーモア満載で描いた、ハートフルなミステリー連作集。

畠中さんの作品は時代小説が中心です。なので、現代ものの作品はあまり無いようです。
本書のほかに『百万の手』(東京創元推理文庫)と『とっても不幸な幸運』(双葉社文庫)の3点。
ということで、本書は畠中さんの貴重な現代もののミステリー。

舞台は政界。と言っても選挙事務所で起こる事件が中心です。
21歳の大学生・佐倉聖は、腹違いの弟を一人で養っている。
すでに引退した大物政治家の事務所で雑用係の事務員を務めている。
昔は不良だったので、腕っ節は強い!そして若いのにめちゃめちゃ気転が効く。
さらに頭も切れる。そんな聖だからこそ、事務所に持ち込まれるあらゆる陳情・難題・厄介事・揉め事の後始末を押し付けられても、見事な手際でまんまと解決してゆく。

五色に変わる猫の謎を解いてみたり、商店街の奥さんに頼まれて、ダイエットしているのにいっこうに痩せない旦那の秘密を探ったり、殺人未遂事件の調査をしたり、さらには事務所に頂いた高級な絵画を持ったまま出奔した秘書を捜索したりと・・・・小さな事件も大きな事件(?)も首尾よく解決だ。
しかし聖も時にはつらい立場に立たされることもある。そんなとき元大物政治家のオヤジは優しく彼のフォローをする。
厳しい世界だが、人とのつながりがとても大切であるということ。人情という言葉が浮かび上がってくる。
とても温かい目線で描かれているそこがとても良い。読んでいる側にストレートに伝わってくる。
読後がふんわり・ほんわかしてくるハートフル・ユーモアミステリー!

『アコギなのかリッパなのか』
著者: 畠中恵
出版社:新潮社
価格:¥550(税別)