心が震える美術エンターティメント「暗幕のゲルニカ」

本屋大賞にノミネートされました、
原田マハさんの「暗幕のゲルニカ」を読みました。

読み終わって後悔・・・・。
こんなに面白い作品だったなんて・・・
何でもっと早く読まなかったのか・・・
猛省しました!!

ニューヨーク近代美術館(MoMA)に勤務する、八神瑤子は、
子どもの頃に見た、ピカソの「ゲルニカ」に心を奪われ、
ピカソの研究の第一人者となった。
愛する夫イーサンとともにニューヨークで暮らす瑤子。
だが、2001年9月11日、世界の崩壊を予言させるような
事件が起きた・・・同時多発テロ。
ニューヨークの象徴ともいえる貿易センタービルに
2機の飛行機が突っ込みビルは崩壊。
多くの人の命が奪われた。そして瑤子の夫・イーサンも犠牲となった。

9.11から2年後、アメリカ政府はイラクへ軍事行為を行うと発表。
瑤子は、憎しみや暴力の連鎖を止めるために、反戦のシンボルであるピカソの
展覧会を企画していた。それには「ゲルニカ」が絶対に必要だ・・・。
米国のイラク攻撃が国連でも受理され、世界はまたもや戦争に
巻き込まれることに!
そして、その声明を国連ビルの演説台で国務長官が行った。
しかし、そこにあるべきはずの反戦のシンボル「ゲルニカ」の
タペストリーがない!
「ゲルニカ」のタペストリーには暗幕がかけられていた・・・。

一体誰が何のために「ゲルニカ」に暗幕をかけたのか・・・?

「ゲルニカ」は1937年にピカソが故郷のスペインゲルニカを
内戦によって空爆され、その悲惨さと反戦の意味を込めて描いた作品だ。
その絵を観た人は、誰も心を奪われてしまう。
畏怖の念を抱いてしまう・・・そんな作品だ。
太平洋戦争前夜、ナチスドイツがヨーロッパの国々を侵略し始めた。
ピカソはそんな時代に、パリに住み絵画を描き続けていた。
ゲルニカ爆撃のニュースに衝撃を受けたピカソはその悲劇を絵画に託した。
その創作の様子は、当時の恋人・ドラが記録に遺していた。
「ゲルニカ」はパリ万博に出品され、様々な反応を得た。
だが、ナチスドイツからは目の敵にされてしまう。
このままナチスの勢いが止まらなければフランスも危ない!
パリにゲルニカを置いておくことは出来ない!
ゲルニカは、スペイン貴族でピカソの友人がオープンしたばかりの
ニューヨーク近代美術館でピカソの展覧会を開き、そのまま
そこに留まるように交渉してくれたのだ。
そして、スペインが真に民主国家になったときに、スペインに
返還されることになった。

そして、現在「ゲルニカ」はマドリッドにある。
瑤子は「ゲルニカ」をもう一度MoMAに出品するために
マドリッドへ向かった。
しかし、交渉のテーブルへつくことも出来ず、
ニューヨークへ帰ることになった。
失意のどん底で帰国した瑤子に、MoMAの理事である、
ルース・ロックフェラーが妙案があると言ってきた・・・・。

同時多発テロが起きた現在のニューヨークと、
大戦前夜のパリを舞台に、瑤子の悲しみと希望、
ピカソの苦しみがリンクし、「ゲルニカ」に繋がってゆく。
亡き故郷、亡き人への思い、強い反戦への想いが様々な形で
描かれ、胸がジーンと熱くなる。
さらに「ゲルニカ」をニューヨークへ取り戻す過程に
テログループの国際謀略も加味され、スリリングな展開へと
広がってゆく。

「ゲルニカ」タペストリー暗幕事件と、本物の「ゲルニカ」を
ニューヨークへと取り戻す妙案がミステリ仕立てに描かれていて
ワクワクする展開も面白い!
「楽園のカンヴァス」を凌ぐ絵画エンターティメント!

『暗幕のゲルニカ』
著者:原田マハ
出版社:新潮社
価格:¥1,600(税別)