40年前の誘拐事件の真相に迫る!「真犯人」

書評を読んで、とても気になっていたミステリ作品
翔田寛さんの「真犯人」を読みました。

昭和49年に起こった、男児誘拐殺害事件。
謎だらけの誘拐事件は、当時の捜査を混乱させ、
未解決のまま、14年が経過した。
そして、静岡県警に新たに着任した県警本部長の肝いりで
この誘拐事件を時効までに決着させるため、
継続捜査班のほかに特別捜査本部が置かれた・・・。

平成27年、8月。
高速道路のバス停のあたりで年配の男性の変死体が発見された。
裾野署に捜査本部がおかれ、遺体発見現場の地取りが開始された。
日下刑事&柳刑事は被害者周辺の聞き込みを行った。
その過程で、被害者・須藤勲が昭和49年に起きた、男児誘拐殺人事件の
被害者の父親だということが判明した。
捜査本部は、40年以上も前の誘拐事件と関係があるのか
疑問をもったが、殺害現場はその誘拐事件の身代金受け渡しの
最初の場所だったことが判明したのだ。

日下と柳は、時効直前にその誘拐殺人事件の特別捜査本部を
指揮した、当時の警視・重藤の話を聞くことになったのだ・・・。

二人を前に、重藤は重い口を開く・・・。
昭和63年、誘拐殺人事件から14年後の捜査の過程を詳細に語り始めた・・・・。

当時の誘拐事件発生時の状況は、混乱を極めていた。
まず、電話の逆探知に失敗し、犯人の声が残せなかったこと。
身代金受け渡し現場に犯人が現れなかったこと。
身代金要求が電話から手紙に変ったことの解明が為されなかったこと。
捜査本部の数々のミスが、結局時効直前まで解明されなかったのだ。
重藤は、継続捜査班を最小限にとどめ、新たな角度から事件を
見直すために、優秀な刑事を揃え捜査にあたらせた。
やがて、当時の捜査では発見できなかった事実が浮かび上がってきたのだ・・・。

特別捜査本部で次々に明かされる事実。
それは、不気味な人間の心の闇とどうしようもないくらいに
苦しい真実を暴き出した。だが・・・。

誘拐殺害事件から40年の時を超え、新たに発生した殺人事件は、
当時の事件の「真犯人」を明らかにした。
長い年月を経て、誘拐事件の謎も解明されてゆく。
その捜査過程がこれまでの警察小説にはみられない面白さだった。

警察小説ファンにおススメの1冊。

『真犯人』
著者:翔田寛
出版社:小学館
価格:¥1,600(税別)