金融コンサルタントの暗躍をリアルに描く!「不発弾」

食品偽装をテーマに描いた「震える牛」
東日本大震災のボランティアをテーマに描いた「共震」

日本が抱える問題点を炙り出し、鋭くえぐる。
まるでノンフィクションのようなリアルさで迫る。
元・時事系の新聞記者だった著者・相場英雄氏。

そして今回描いたのは、日本経済最大のタブー!!!

日本大手の電機企業による巨額の粉飾決算が発覚し、
記者会見場で上層部が揃って謝罪するシーンから始まる。
記者たちの鋭いツッコミにたじたじの役員たち。
だが、彼らにはまだ逃げる術があるようだ。
彼らの陰に控えるある男は笑った。

警視庁キャリア・小堀秀明は警視庁捜査二課を束ねる管理官だ。
捜査二課は詐欺や贈収賄のほか、企業内の横領や背任行為など
知能犯を専門に摘発する。
日本大手の電機企業・三田電機は巨額の粉飾決算が発覚し
記者会見を行ったばかりだ。小堀は巨額の粉飾があったにも
関わらず、上場廃止にならない三田電機に疑惑を持った。

小堀は、金融界の様々な人物に接触し、捜査するうちに
ある金融コンサルタントの存在を掴む。
ターゲットをその男に絞り込み、過去にあった企業内の金融がらみの
事件を調べてゆくと、不審な自殺や事故で関係者が亡くなって
いることが判明する・・・。

その男は、バブル直前に証券会社に入社し、激動の金融業界を
あらゆる手段を講じて生き延びた。
そんな男が仕込んだ「不発弾」は、予想を超える規模でこの国を蝕んでいた・・・。

日本経済を陰で動かし暗躍し続けた男の半生と、小堀が男の正体を
暴いてゆく過程が交互に描かれて、物語が進むにつれ緊迫感が増してゆく。

実在の企業や人物は、もちろん名前を変えて描いているが、読んでいると
誰だかわかるようになっている。
これが事実ならば、この男が仕込んだ「不発弾」がいつ爆発しても
おかしくない。わずかな導火線で爆発は連鎖するだろう・・・・。
日本経済は崩壊するのか・・・?

そんな恐ろしい予感が常につきまとう、不穏なこの作品は鳥肌ものだ!!

『不発弾』
著者:相場英雄
出版社新潮社
価格:¥1,600(税別)