益々面白さが増す!‘鏑木特捜班’シリーズ第3弾「ダンデライオン」

横溝正史ミステリ大賞受賞作「デッドマン」から3作目。
難解な殺人事件の真相を暴いた鏑木警部補率いる
「鏑木特捜班」が三度集結した。
シリーズ2作目の「ドラゴンフライ」では、トンボが
キーワード、そこから猟奇殺人の謎を暴いた。
そしてシリーズ3作目は「ダンデライオン」。
タンポポが謎を呼ぶ!?

ひらめきと刑事の勘が冴える・鏑木警部補、べらんめぇ口調
で口は悪いが情に厚い鏑木と同期の正木警部補、お金持ちで先輩にも
時々上から目線、けれども真面目で今風の若者・姫野巡査。
科警研でプロファイリングが専門、ものすごく頭が切れる澤田。
この4人が今回挑むのは、空飛ぶ死体の謎だ・・・・。

「デッドマン」「ドラゴンフライ」以上の面白さで物語が展開する。

東京の山間部にある廃牧場のサイロで、16年前に失踪した
女子大生の死体が発見された。
その死体は、サイロの中の上空3メートルのあたりで、胸を鉄パイプで
貫かれたまるで空中を飛んでいるような姿だった。
そして、中から閂がかけられていたため密室。
しかも、その死体は16年も経過しているにも関わらず、
ほぼ死んだときの状態のままミイラ化していた。
女子大生の名は、日向咲(えみ)。
鏑木特捜班の姫野巡査はその名前を聞いたとたん、
謎の言葉を残し、倒れてしまう・・・・。

鏑木は死体の謎を解くとともに、姫野が口にした
言葉が気になった。姫野は咲を知っているのか?
いつ、どこで・・・?

咲の身辺を捜査し始めた頃、新たな殺人事件が起こった。
湾岸にある高層ホテルの屋上で焼死体が発見された。
被害者は殺害される直前、110番通報をしていた。
警察はすぐさま現場に急行したが、手遅れだった。
屋上の鍵はホテルの中からかかるようになっていた。
犯人は警察が来る前に屋上から出て鍵をかけて逃げたのか?
そんな時間は無かったはずだ。
ではどんな手を使って逃げたのか・・・?まさか空を
飛んだ・・・・?

空を飛ぶ・・・。今回の事件のキーワードはそれか・・・?
鏑木たちが様々な推理を展開する中、焼死体の身元が割れた。
ある政治家の秘書だったのだ・・・。

刑事部主導の捜査のはずが、なぜか公安が出張ってきた。
お互いに情報は共有できない。
だが、捜査一課長が鏑木たちの隠密行動を許したのだ。
やがて、咲が大学のサークル「タンポポの会」で
活動していたことに辿り着く・・・。

「デッドマン」のぶっ飛んだ展開、「ドラゴンフライ」の
衝撃的な謎の連鎖、そして「ダンデライオン」は、これらを
はるかに凌駕する面白さだ。
ありえない死体の謎、密室、そしてさらなる謎をよぶ
焼死体。本格推理小説なみのトリックに息を呑む!
さらに、警察小説の捜査の醍醐味と組織の軋轢をバランスよく
描き、ミステリ好きにはたまらない展開になっている。
シリーズごとに面白さが進化しているのだ。

シリーズ新作を待ちたい!

『ダンデライオン』
著者:河合莞爾
出版社:KADOKAWA(文庫)
価格:¥800(税別)