傑作の映画ノベライズ「22年目の告白」

先日、作家の浜口倫太郎さんが、今井書店各店に
ご来店されました。
はまさきも少しお話をさせて頂き、とても熱心な
作家さんだな感じました。

それで前から気になっていた「22年目の告白
私が殺人犯です」を読みました。

藤原竜也さん、伊藤英明さん主演の映画
「22年目の告白~私が殺人犯です~」の
映画ノベライズです。

映画ノベライズは、小説とは違い映像化されたものを
小説にした作品です。小説を原作にしたものより
少し話題性を欠いてしまいますが、この作品は
映画が終わってもずっと売れ続けているようです。
その魅力は何だろうと思いました。

弱小出版社に勤める女性編集者がある日、絶世の
美男子から、知り合いが描いた作品を読んで欲しい
とゲラを手渡された。

読み進めてゆくと次第にトリハダが・・・
そこには7年前に時効が成立した連続殺人事件の
犯人しか知りえない事が描かれていた。

これは犯人の告白本だ!そして男は恐ろしいことを告げる。
自分が殺人犯だと・・・・。
連続殺人犯の告白本など出版出来ない・・・・。
しかし、この本には何かがある・・・。
そのはざまで女性編集者は揺れるが社長は大乗り気だ。
男は本を売るためなら何でもすると言う。
男と社長の強力な説得で出版することを決める。
犯人はとても連続殺人を犯したような男には見えない。
紳士で知的でそして絶世の美男子。
絶対に売れると誰もが思った。
そしてその本が発売されるやいなや、熱狂的な
支持者が現れ、殺人の告白本は売れに売れた。

しかしサイン会会場で、男は遺族に襲われる・・・。

ノベライズでありながら、キャラクターの心理が
丁寧に描いてあり、編集者の苦悩や、遺族の激しい怒り、
復讐心など映画を観ていなくても心に沁みてくる。
テンポの良い小説を読んでいるような感じだ。

途中で事件真相はわかってしまうが、それほど気にならない。
大切なものを奪われた人たちが苦しみと悲しみからいかに
それを乗り越え、新たな道を踏み出すか。
著者の思いがそこへ注がれているからだ。
クライマックスを読んでいると自然に涙がこぼれてきた。

映画は観ていないが、このノベライズを読んだら
とても観たくなってきた。

『22年目の告白 私が殺人犯です』
著者:浜口倫太郎
出版社:講談社(文庫)
価格:¥660(税別)