思わず息をのむラスト!「放課後に死者は戻る」

[タイトルとイラストに惹かれて手に取ってみました。
秋吉理香子さんの「放課後に死者は戻る」。
ちょっと不穏なタイトルなんですが・・・・。

映画化された「暗黒女子」続く学園もので、
主人公は男子生徒です。

ある日目覚めると、知らない人たちが知らない名前で
僕に必至で呼びかけていた。
一体何が起こっているんだ?
まわりを見ると、白衣の男性や女性。
どうも病院らしい・・・・。

でもなんで僕は全く別人の名前で呼ばれているの?
鏡を見た僕は愕然とした。
鏡に写っているのはオタクのダサい顔じゃなく、ものすごく
ハンサムな男の子だった。

そして、思い出した!僕はある日教室の机に入っていた
手紙で呼び出され、崖から突き落とされたのだ。
その時、僕を助けようとし巻き添えになった美形の男の子の顔と
同じ顔だった。

そうか・・・彼と入れ替わってしまったのか・・。
じゃあ、僕は死んでしまったってこと・・・?

状況を把握した僕は、無性に腹が立ってきた。
なぜ僕は殺されなければならなかったのか!?
誰が僕を殺したのか?

退院した僕は、元いたクラスに転校し、入れ替わった
姿で犯人捜しを始めた。
動き始めた僕に誰かが警告を始めた。

華やかなイケメンとしてクラスメイトに接する僕。
オタクでダサかった僕には誰も声をかけてくれなかったのに・・。
こうして接するとみな良い奴に思えてくる。
でもこの中に僕を殺したやつがいる・・・。

スクールカーストの中で、自分自身の居場所を
必死で探す高校生たち。
そんな高校生たちの生き方を読んでいると
切なくなる。
青春ってみな等しくあると思っているのに
今の高校生たちは自分らしく生きることが出来ないのか?

そんな思いを抱きながら読み進めていくと、謎解きの過程もスリル満点だ。
ギリギリまで僕を悩まさせる謎の警告者。
美青年にからむクラスで浮いてる女の子。
そして、オタクで仲の良かったたった一人の親友。

彼らがどう交差してゆくのか?
ラストに明かされる真実に思わず涙、そして息を呑む展開に!
切なさの先にある希望の余韻が心に残る青春ミステリー。

『放課後に死者は戻る』
著者:秋吉理香子
出版社:双葉社(文庫)
価格:¥593(税別)