新たな道尾ワールドにはまる!「風神の手」

朝日新聞出版から発売された、道尾秀介さんの
「風神の手」を読みました。

何だか、懐かしいような、切なくなるような
心に沁みる叙情豊かなミステリーです。

遺影専門の写真館「鏡影館」を舞台に数十年の歳月を経て
重なり合う、彼、彼女たちとひとつの事件の結末・・・。

ある事件を背景に、第1章「心中花」は、女子高校生が若い漁師に
淡い恋心を抱く。彼についた小さな嘘が、きな臭い事件へと繋がり、
二人の運命を変えてしまう・・・。
胸がドキドキするような、懐かしいような、切なくなるような展開。

第2章「口笛鳥」は、小生意気な小学5年生の男の子二人、まめ&でっかちが、
ある事件に巻き込まれてしまう冒険物語。
二人の友情と勇気をためす。なんとなく
映画「スタンド・バイ・ミー」を思わせる。

第3章「無常風」は、死を前にした老女が自らの“罪”を打ち明ける。
長い間の罪と葛藤からようやく解放される。

最終章「宵待月」は、各章の登場人物たちが、意外なかたちで集う。

何だろうこの二つの物語・・疑問に思い第3章を読んでいくと、
そんな疑問は吹っ飛ぶ展開。
関連がないかに見えた二つの物語は、
謎のピースの最後がぴたりとはまったように繋がるのだ。
なんだそういうことだったのかと膝をうちたくなる。
一つの作品でラブストーリー、冒険物語、そしてミステリーが楽しめる。
最終章を読んだ後の爽快感がたまらない。

「すべてのエピソードが伏線」と、各メディアで絶賛された。
今までにない道尾ワールドが広がる!著者の新たな代表作。

『風神の手』
著者:道尾秀介
出版社:朝日新聞出版
価格:¥1,700(税別)