子どもたちの心に触れる・・ミステリー「かがみの孤城」

このミス2018年版国内編8位にランクイン、
さらに本屋大賞にノミネートされた『かがみの孤城』を
読みました。

子どもたちのピュアな心の描写に切なくなる、
そんなミステリーです。

中学1年生のこころは、学校でいじめにあい、
心を閉ざし、不登校になっていた。
こころの両親は娘の態度にどう対応しようか?
悩む日々が続いていた。
いじめのきっかけはほんの些細な事だった・・・。

ある日、こころがいつものように自分の部屋に
引きこもっていると、部屋にある鏡が突然発光し始めた。
こころは恐ろしいと思いつつ手を触れてみると
鏡の向こうに引っ張られてしまう。
気がつくとそこは見たこともないお城のような場所だった。
そして、こころに声をかけたのは、狼の仮面をかぶった
髪の長いワンピースを着た女の子だった。
こころは恐ろしさのあまり、戻ろうとする。
だが、女の子はそれを許してくれなかった。

こころは、ある部屋へと案内される。
そこにこころと同じような年頃のこどもたちが集まっていた。
こころを入れると7人の男女。

狼の仮面をかぶった少女は、この城のルールをを説明し、消えてしまう。
その後自己紹介をし、なんとなくお互いを探り始める。

やがて誰もが学校に行っていない事を知る。
鏡が光っている限り、いつでも自分の部屋とお城を
行き来できる彼女たちは、少しずつ心を開いていく・・・。

現実の世界では理不尽ないじめにあい、心に深い疵を持つ。
読んでいると、たったそれだけの理由でいじめは始まって
しまうのか・・。
だから、心を傷つけられた子どもたちは自らの中に引きこもってしまうのか?
とものすごく考えさせられた。

それが今の子どもたちの世界。
だから、子どもたちは自分の居場所を確保するために必死で戦っている・・・。

こころたちにとって、鏡の向こうのお城は自分が素直になれる
唯一の場所、そして自分にはこんなに素敵な友達がたくさんいると
胸をはれる場所。
そんな過程を読んで、子どもたちの事を思うと胸に迫るものがある。

そしてこの作品は、なぜ子どもたちはこの城に集められたのか?
彼らの関係は何か?誰が何のために・・・?
様々な小道具を使って謎が張り巡らされている。
そのミステリーを解き明かすことで、城に集められた意味も判明してゆく。

読み終わった後、たくさんのことに気づかされる。
相手を思いやること。優しさとは?勇気とは?
本当の友情とは?子どもの心を救うとはどういうことか?

大人に大切な事を教えてくれた素晴らしい作品。

『かがみの孤城』
著者:辻村深月
出版社:ポプラ社
価格:¥1,800(税別)