`いじめ’という絶望を描く!「罪人が祈るとき」

「ジャッジメント」で衝撃デビューした、小林由香さん。
2作目の「罪人が祈るとき」を読みました。

社会問題になっている「いじめ」をテーマに絶望の
中を生きる少年と、息子を失った父親の苦しみに
焦点をあてた慟哭のミステリーです。

「十一月六日の呪い」・・・。
主人公の少年が通う学校で、この日に三年連続で
自殺者が出たため、そんな噂が広がっていた。
少年はほぼ毎日いじめにあっていた。
いじめの凄まじさに耐えきれなくなった少年は、
自分をいじめている相手を殺して、自分も
十一月六日に死ぬつもりで殺害計画を考えていた。

そんな時、公園でピエロに出会う。
謎のピエロ・・・。彼は殺害を手伝うと言う。

一方、いじめによる自殺で、息子を喪った
男性は、その後妻も喪い一家が崩壊した。
息子や自分、家族をどん底まで追いつめた
犯人を捜し始める・・・。

日本に巣食う病理は、大人だけでなく子どもたちをも蝕んでいる。
不条理の中で子どもたちの居場所はますます無くなっている。
この小説はそんな大人や子どもたちの慟哭を、
フィクションという手段で描くことによって、
強く訴えているのだと思う。
この現実から眼をそむけてはならない。

終盤の展開には思わず涙があふれてくる。

『罪人が祈るとき』
著者:小林由香
出版社:双葉社
価格:¥1,600(税別)