モンスターの恐ろしさを描く「怪物」

ミステリー好き、警察小説好きと言いながら
なかなか手に取らなかった福田和代さん作品。

先日これはと思う作品「怪物」を読みました。
人は心に「怪物」を飼っているのか・・・
と思った作品です。

定年間近のベテラン刑事香西は、誰にも打ち明けた
ことない秘密を抱えていた。
香西は「死の匂い」をかぎ分けられるのだ。
これまで、香西は事件現場でその能力をいかんなく発揮してきた。
仲間からは、「刑事の勘」が良すぎると好評価を得ていた。
しかし、香西は自分のこの能力が時に大きな無力感を伴うことに
刑事として限界を感じていた。
15年以上も前、一人の少女が誘拐された上に殺害された。
容疑者の一人の部屋に入った時、香西は強烈な「死の匂い」
と少女の叫びを聞いた。少女はここで殺されたのだ・・・。
だが、その容疑者は逮捕されなかった。警察庁のキャリアの
息子だったため容疑者からはずされたのだ。

その事件は時効になってしまったが、香西はどうしても
あきらめることが出来ないでいた。

そんなある日、夫が10日たっても家に帰ってこない、
と妻が刑事に訴えていた。香西は興味を持ち、
妻の言い分を聞き夫の行方を探してみようと思った。
夫が立ち寄った先を調べる内に、香西はあるゴミ処理場に辿り着く。
その処理場の特色は、有機物を全て水で溶かすというものだった。
「もしかして人間も溶けるのか?」香西は突然そんな考えが浮かんだ。
そしてそこで出会った青年・真崎亮に不穏な気配を感じる。

時効間近のベテラン刑事に訪れた過去の事件の清算。
しかしそれは危険な罠だった・・・。

「怪物」とは一体誰のことなのか?
この本を読んでいると、人間の心の中には
誰でも「怪物」がいるのかも知れないと思ってしまう。
人が一線をこえてしまう心理にハラハラさせられた。

福田和代さんの作品もっと読みたいと思った。

『怪物』
著者:福田和代
出版社:集英社
価格:¥1,800 文庫版¥700(いずれも税別)