2018年徳間書店文庫大賞受賞作「二年半待て」

女性を主人公にしたサスペンス小説を
多く描いている新津きよみさんの短編集
「二年半待て」が、2018年徳間書店文庫大賞を
受賞しました。

サスペンス小説も大好きなはまさき。
早速読んでみました!

女性が長い人生で通過する転換期の「〇活」に
焦点を充てたサスペンスミステリー。

全7話あり、「就活」について描かれた第1話は、
娘の就職がなかなか決まらないことに気をもむ
母親の心情を描く。娘のこともさることながら、
自分の母がひた隠す自らの出生の秘密が、意外な
結末に結び付く。ええ~っと驚愕!

「婚活」について描かれた第2話。
男性が、恋人の女性に結婚は2年半待って
と懇願。その理由とラストに困惑?

「恋活」がテーマの第3話。
理系でオタクっぽい兄になんとか恋人をつくって
あげようと画策する妹。だが兄の態度に
危険なにおいを感じ取った妹は・・・。
良かれと思ってやったことがものすごく
恐ろしい結果を招く。ちょっと怖い1作。

「妊活」がテーマの第4話の物語は、
大学生の息子が年上の女性と結婚した。
しかも女性はバツイチの上に息子とはできちゃった婚。
40代の母親は内心複雑だ・・・。
しかし、嫁の子どもが欲しい願望は強い。
そんな女性二人に起こったアクシデント!
なるほど、そういうことだったのか!と納得。

「保活」とは、保護者が子供のための保育所を探す
活動を言う。介護、多重介護、孫の世話と
50代であらゆる介護をしてきた女性は、最近高齢の実母の
様子がおかしいことに気づく・・・。もしや認知症か・・・?
またしても介護の文字が頭をかすめる・・・・。
ダブルケアで心身ともに消耗する女性の姿を描く・・・?
読んでいると自分にもあてはまってきそうで一番恐怖した1作。

「離活」がテーマの第6話。若い頃、一人の男性を巡って
親友と争った。結局好きだった男は親友に奪われてしまう。
そんな2人が離婚をした!?
親友の罠にはまってしまった女性の本当の叫びが胸を打つ!

「終活」はお片付け。謎の日記を遺して逝った祖母。
恋活パーティーで出会った男性がその謎を解くという。
日記の謎解きをするうちに、祖母の過去が明らかに。
ちょっと切なくなる1作です。

女性に起こるであろう身近なシチュエーションが
見事なミステリーに変貌している。
ちょっとドキッとするサスペンス調の作品も含め、
見事に騙される。軽いタッチで描いてある分、
ストーリー展開とどんでん返しの持っていきかたが
巧過ぎる!
さらっと読める7つの短編集です。

『2年半待て』
著者:新津きよみ
出版社:徳間書店(文庫)
価格:¥640(税別)