引き裂かれた王と麒麟は!「十二国記 黄昏の岸 暁の天」

十二国記シリーズのなかでも、戴国と慶国の
お話が読める貴重な巻。
しかもこの物語は、泰麒が蓬莱(日本)に
戻ってしまってから、戴国がどのように
荒廃していったのかを描いている。
つまり、「魔性の子」のもう一つの物語だ。

泰王驍宗と泰麒が行方不明になった戴国は、
逆賊たちに支配され、荒れに荒れていた。
妖魔が跋扈し村は次々破壊され続けていた。

戴国の将軍・李斎は、逆賊たちと闘い続けた。
しかし仲間は次々と逆賊に寝返り、李斎は
孤立無援になりつつあった。
戴国を救うため、李斎はある決心をする。

慶国の王・陽子は、戴国から命からがら
逃げてきた李斎を保護した。
李斎は、陽子に援助を求めてきたのだ。
何とかして戴国を救いたい・・・!
李斎の悲痛ともいえる叫びに陽子は応えようと
決心する。

陽子の要請を受け、各国の麒麟たちが慶国に集う。
延麒は、泰麒のかすかな気配を蓬莱で感じ取っていた。
麒麟たちは泰麒の行方を探す・・・。
果たして泰麒は行方は・・・?

戴国を救うという、李斎の強い思いは、やがて
天帝が作られたという「十二国」のあり方に
疑問を呈す。なぜ?あれほど国を民を思う王と
麒麟を戴国民から奪ったのか・・・!?
なぜ、なぜ・・・?

心を抉る、奥の深い物語に感銘を受ける。

さらに、初登場の氾王と氾麟が強烈!
延王と氾王とのかけあいがまるで漫才!?
そういう一息つけるところも面白い!

そして2019年に発売されるという新刊長編は、
「戴国」の物語と聞いている。楽しみだ~。

『黄昏の岸 暁の天 十二国記』
著者:小野不由美
出版社:新潮社(文庫)
価格:¥710(税別)