女性刑事小説の元祖!乃南アサさん『凍える牙』

第115回直木賞受賞作です。女刑事・音道貴子初登場作品。この作品で音道貴子が大変人気となり、短編、長編でシリーズ化されました。シリーズ中最高傑作!

いきなり!冒頭からすごいシーン!深夜のファミレスで、突如男の体が炎上したのだ!男には獣による咬み跡も残っていた・・・。
その事件で、特別捜査本部が設置された。
警視庁刑事部第三機動捜査隊立川分駐所に所属する、刑事・音道貴子はその捜査本部で、滝沢という、いかにもたたき上げの刑事!という感じの中年刑事とコンビを組むことになった。
不機嫌・・・。女の刑事とコンビを組むことが耐えられない!そんな表情。音道はいつものことだとあきらめた。
音道と滝沢は、焼死した男の身元を調査している過程で新たな事件に遭遇。獣に咬まれたらしい遺体が発見される。
やがて同じ獣による咬殺事件が続発する!何がこのむごたらしい事件を起こしているのか!?音道と滝沢は、じわじわと事件の真相に近づいていく・・・・。

今では女性刑事も警察では重要なポストにいることも多いと思う。
1996年に発売されたこの作品では、女性刑事はまだまだ一人前の刑事として扱われていない様子がとても現実的。
しかも厳しい仕事の中で必死に生きる女性像が音道貴子を通してリアルに描かれ、ミステリー小説にさらに深みを与えている感じ。
滝沢刑事は、素直になれない中年男性の典型?!彼の描き方は非常に上手いなあと感じます。

この作品は、読んでいると切なくなります。事件の影に隠された悲しいもうひとつの事件。そして音道と滝沢のコンビはどうなるのか?

さすが直木賞受賞作だ!と思える非常に面白い警察ミステリー小説です。

『凍える牙』
著者: 乃南アサ
出版社:新潮社
価格:¥750(税別)