柚月裕子さん著「最後の証人」「検事の本懐」
「検事の死命」の検事・佐方貞人シリーズの
最新刊「検事の信義」を読みました。
前作から6年。待ちに待った新作です。
今回は佐方の信念が強く感じられる作品です。
短編「裁きを望む」「正義を質す」「恨みを刻む」の
3作品と中編の「信義を守る」の4作品が収録。
それぞれの短編は、事件の面白さ、佐方の魅力が
充分に描かれて、素晴らしいです。
しかし、タイトルの「検事の信義」を一番感じられる
作品は、中編の「信義を守る」です。
認知症を患った母親を殺害した罪で逮捕された男の
裁判を担当する事になった佐方貞人。
取り調べでは、母親の認知症がひどくなるにつれ、
介護をしてゆくことが困難になり母親を殺害
したと供述。警察の調書を読んでも、身勝手
な介護殺人だということを強く感じた。
しかし、佐方はその調書に違和感を抱く。
それは、遺体発見から逮捕までの「空白の2時間」だ。
佐方が独自に調査を進めると、見えてきたのは、
男の意外な素顔だった。
刑事部で事件を担当した、矢口検事は佐方のやり方に
異を唱える。しかし佐方は、「事実は真実ではない」
「なぜ事件がおきたのかを突き止め、罪をまっとうに
裁かせる。それが私の信義」と言い切った。
素晴らしい!このくだりを読んだ時、身体中に
衝撃が駆け巡った!思わず背筋がピンと張った。
佐方の正義と信念が、隠された真実を明らかにしてゆく!
かつてない感動と半端ない面白さ!
そして佐方の誇り高く誠実な態度に清々しさを感じた。
『検事の信義』
著者:柚月裕子
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,500(税別)