刑事の執念を描く!「雨に消えた向日葵」

吉川英梨さんの描く警察小説。
シリーズものはほぼ全部読んでいますが、
単発ものは初めて手に取りました。

シリーズものとは一味違う警察小説です。

埼玉県坂戸市で、小学5年生の少女が失踪した。
少女の趣味はちょっと大人な漫画を描くこと。
その日も親友に頼まれて、漫画を描いていた。
ところが大雨で、学校から下校を促され、
豪雨の中、少女は一人歩いて帰った。

その姿が最後に目撃されており、現場には
傘が一本残されていた。

少女は周囲も思わず振り返るくらいの美少女。
姉の証言で、一か月前から現場と同じ場所で
不審な男につきまとわれていたことが判明。

誘拐か、家出か、事故か?県警捜査一課の奈良は、
少女の行方を追う。
捜査が進む中、中学生グループが少女に目をつけていたこと、
さらに電車内から少女の私物が発見されるなど、
有力な情報があがり、捜査は進展するかと思われたが…。

二転三転する証言、虚偽情報など、様々な情報
が錯綜し、有力な手掛かりが得られない中、
時間だけが過ぎてゆく。やがて、捜査本部は縮小された。
そんな中、奈良は一人捜査を続けた。

そして、焦燥にかられる被害者家族たちを
襲うさらなる悲劇!
詐欺被害、誹謗中傷、いじめ…。

被害者なのに、なぜこれほどまでの
仕打ちを受けるのか?

歪んだ社会、歪んだ正義、さらに弱者を
貶めようとする悪意。
心に闇を抱えた人間たちの本性が淡々と描かれる。

誰もがあきらめかけた、少女の行方を
追う刑事の執念の捜査とその生き様を
描いた、心が揺さぶられる物語。

『雨に消えた向日葵』
著者:吉川英梨
出版社:幻冬舎
価格:¥1,600(税別)