無差別銃撃事件を生き延びた人たちの悲劇と再生を描く「スワン」

呉勝浩さんの話題のミステリー「スワン」
を読みました。

ある日、突然起こった無差別銃撃事件。
生き残った人たちの苦しみ、哀しみ、葛藤…。
それらを乗り越えいかに生きてゆくのか?
想像を絶する悲劇の裏の真実とは何なのか?

奥深いテーマに、心を揺さぶられました。

巨大ショッピングモール「スワン」は、
地元の人たちの憩いの場所だ。
その日も午前中から、たくさんの人々が
集まり始めていた。

ところが、平和な日常は突如一変する。
銃を持った男が発砲しながら店内へ入ってきたのだ。
ボーゼンとする人々、銃撃され斃れる人、
逃げまどう人々、店内はパニック状態に陥った….。

無差別銃撃事件。死者21名を出した
これまでにない悲劇。

その中で、高校生の片岡いずみは犯人と
接しながら生き延びた。
だが、おなじく事件に遭遇した同級生の
小梢の証言、「次に誰を殺すか?いずみの
指名によって犯行が行われた」という
事実が週刊誌で暴露され、いずみは被害者
から一転、非難の的になってしまった。

苦しみから逃れられない日々を過ごすいずみの
元へ不可解な招待状が届く。
「お茶会」と題された会場に集められたのは、
生き残った事件の関係者5人。
その目的は、事件の中のもうひとつの「死」の
真相を明らかにすることだった。

生き残ったこの5人が集められたのは何故なのか?
もしかして、復讐が目的なのか?
彼らは何を隠しているのか?

殺戮のシーンは、感情のかけらも感じさせない
描写が続く。それも恐ろしいほどに。
そして、謎の解明に至る過程は、人間の
ありとあらゆる感情がせめぎあう。
そのコントラストがとても印象的だ。

緻密に計算された謎の提示。
じわじわと明らかになる悲劇の裏の真実!

最後の最後まで読み手を惹きつけてやまない
ストーリー展開に心を奪われた。

『スワン』
著者:呉勝浩
出版社:KADOKAWA
価格:¥1,700(税別)