本格ミステリ大賞受賞作「刀と傘」が凄い!

昨年発表されたミステリーランキングで
「ミステリが読みたい」国内1位、
「このミステリーがすごい」国内5位、
「文春ミステリーベスト10」国内10位、
「本格ミステリ」国内4位にランクインした、
伊吹亜門さんの『傘と刀』(東京創元社)
を読みました。
本格ミステリ大賞を受賞した新人作家さん
です。この賞にふさわしい、とても
面白かった!

幕末の京都が舞台。
佐幕派・倒幕派の両方から命を狙われていた男が
隠れ家で滅多斬りにされていた。
尾張藩士の鹿野師光はこの件で佐賀藩士の江藤新平と
知り合う。
江藤は惨殺現場とその周辺、被害者の人間関係
を調べ、事件の謎を鮮やかに解いてみせた。

明治になり、江藤は司法省の改革に動き出す。
自分の右腕として、鹿野師光を探す江藤。

江藤は司法改革に抵抗する京都の弾正台を
つぶすために、密偵を潜入させる。
しかし、密偵は自害。だが江藤はその死に
不信を抱く。その事件で鹿野と再会した江藤。
密偵の死は自殺か?他殺か?

国家転覆をはかり、収監されていた囚人。
その日のうちに処刑される予定だったが
毒殺された。誰が毒を盛ったのか?
動機のあるものは何人かいたが、すぐに
死を迎えるのにわざわざ毒殺するとは?
その動機が衝撃的!

市政局次官と女中が妾宅で何者かに殺害された。
彼らを襲った犯人は、妾によって銃殺された。
たまたまその家の前を通りかかった江藤は、
単純に見えたこの事件の裏にある企みに
気づく・・・。

幕末から明治へと時代が激しく変わる。
そんな過渡期ゆえに起きた数々の事件。
現在のような科学捜査はない。
人間の怜悧な観察眼と論理的頭脳のみが
事件の謎を解く。
その鮮やかな謎解きに瞠目する。

江藤と鹿野は数々の犯罪に関わるが
その過程でぶつかる二人の正義。
江藤の目的をためなら手段を選ばない
強引なやり方に憤りを覚える鹿野。
そんな二人を待ち受ける最後の事件とは?

幕末から明治にかけて、激動の時代の
息吹が圧倒的臨場感をもって描かれる。
時代小説としても本格ミステリとしても
楽しめる凄いミステリ。

『刀と傘 明治京洛推理帖』
著者:伊吹亜門
出版社:東京創元社
価格:¥1,700(税別)