事故か?人災か?モラル無き人間の行動を描く!『乱反射』

第63回日本推理作家協会賞を受賞した、貫井徳郎氏のサスペンス大作『乱反射』(朝日文庫)。この本ほど、読み終わった後に自分の行動をじっくり振り返りたくなった本はありません。モラル無き現代日本の病巣を抉った、社会派サスペンス。

不慮の事故により、幼い子供が亡くなった。子供を失った父親の慟哭。
わが子はなぜ死なねばならなかったのか!?真相を追ううちにやがてわかってきたことは、誰にでも心当たりのある、小さな罪の連鎖だった。
決して法では裁けない「殺人」・・・。
この小説に登場する小さな罪を重ねる人々は、普通の人たちだ。
自分たちが犯している、小さなルール違反・・・。確かに自分が生活する範囲内では多少迷惑をかけるかもしれない・・・しかし‘多少’だ。
そういう気持ちは誰にでもあるもの。それが大それた事故につながるなど誰に想像できるだろうか・・・。
しかしその気持ちこそが恐ろしい凶器となることがある・・・。そういう事実をこれでもかと突きつけられた!
ルール違反をしている人たちの描写が長い!という人もいるが、ここまで描かなければ説得力に欠けるのではないか、私はそう思う。
自分たちの日常は決して自分一人のものではない。自分の行動は必ず誰かにつながっているということを思い知らされた1冊。ここまで描ける貫井さんが凄い!

『乱反射』
著者: 貫井徳郎
出版社:朝日新聞出版社
価格:¥820(税別)