心震える!ハードボイルド小説!沢木冬吾氏「約束の森」

沢木冬吾氏は、『償いの椅子』(角川文庫)でブレイク。
胸が熱くなるハードボイルド小説を描ける、数少ない作家さんです。
『償いの椅子』もとてもよかったです。しかし、本書は『償いの椅子』をはるかに凌駕する感動と興奮の超大作です。

最愛の妻を亡くし、公安を追われた男が、再度公安のために命を懸ける!?若い男女の父親として偽の家族を装い、それを餌に大物をおびき寄せる・・・。
北の辺境で始まった、偽装生活。そこで男が最初に出会ったのは、ドーベルマンとしては見る影もない、一匹の犬だった。
男の過去の仕事は犬がパートナーだった。もう一度生きなおす、この犬と一緒に・・・。
人間不信に陥った犬とどう接していくのか・・・?興味深く見つめる、娘。そしてその娘を監視する若い男。
奇妙な生活が続いていくが、犬との信頼関係が深まるにつれ、彼らとの関係も次第に変化していく。

そして、追うものと追われるものの関係も逆転していく。いったい何が真実で、だれが味方なのか?
錯綜する情報、裏切物は誰!?しかし男の守るべきものは、新たに生まれたこの家族!たとえ何のつながりはなくても、確かに家族としての絆が生まれた。男は大切なものを守るため、今度こそ失わないために、再び戦う決意をする。

日本のハードボイルド小説で、こんなにも胸が熱くなる作品に出会えるなんて・・・!この本を読んでいた至福の時間。この世界に入り込んで一緒に戦っていたような気がする。ラストシーンのどうしようもない興奮が忘れられない最高の一冊!

『約束の森』
著者: 沢木冬吾
出版社:角川書店
価格:¥1,900(税別)