美貌の元弁護士が難問を解決!「合理的にありえない」

「検事・佐方貞人」シリーズや「孤狼の血」、
「盤上の向日葵」「慈雨」次々とヒット作を生む
柚月裕子さんの文庫新刊「合理的にありえない」
を読みました。

5作の短編を収録。
短編での凝縮された面白さが際立っている!

ある事件で、弁護士資格を剥奪された
上水流涼子は、頭脳明晰な貴山を助手に
探偵エージェンシーを立ち上げた。

請け負う仕事は、ちょっとヤバそうな
仕事。しかし傷害と殺人は絶対に受けない。
それがルールだ。

「確率的にありえない」は、
未来が見えると言い切る怪しげな経営コンサルタントに
騙される、会社社長の物語。
涼子と貴山のコンビがそのコンサルタントに仕掛けるが。
最後に涼子が会社社長に言った一言にハッとする。

「合理的にありえない」は、
バブル期に儲けた資産で悠々自適の生活をおくる夫婦。
しかし、妻の金遣いが荒くなり、夫は激怒。
妻はいったい何にお金をつぎ込んだのか?
夫婦とは何かを考えさせられる。

「戦術的にありえない」は、
賭将棋で必勝を期すヤクザが登場。ここは貴山の出番。
どのような手を使って、勝たせるのか?
ハラハラドキドキワクワクの展開が待っている。
「盤上の向日葵」に賭将棋のシーンがある。
繋がっている~とうれしくなった。

「心情的にありえない」は、
上水流涼子が、弁護士資格をはく奪された過去と
貴山との出会いが描かれる。
上水流がなぜ弁護士資格をはく奪されたのか?
その謎にも迫り、ミステリーとして読みごたえがある。

「心理的ありえない」は、
野球賭博に絡んだトラブル。「弧狼の血」で
暴力団の抗争を描いた著者だからこそ描けた
ギャンブルの闇。賭け方の詳細が非常にリアル。
この回も貴山の仕事が際立っている!

美貌の元弁護士と切れ者の助手のコンビが、
クールにスタイリッシュに、そして時に非情な
手段で依頼人からの難題を解決してゆく。

殊に欲にまみれた輩や人の痛みがわからない
輩への仕掛けは容赦がない。

読後の爽快感が半端ない!著者の魅力が全開の
痛快エンターテインメント小説。

『合理的にありえない 上水流涼子の解明』
著者:柚月裕子
出版社:講談社(文庫)
価格:¥700(税別)