斬新!バラエティに富んだ傑作ミステリ4編「透明人間は密室に潜む」

一昨年の各社ミステリランキングの
上位に入った阿津川辰海さんの「紅蓮館の殺人」。
山火事で館に閉じ込められる特殊な
クローズドサークルと、館焼失までの
カウントダウンを背景に高校生探偵・葛城が
ロジカルな推理で殺人事件の真相に迫った
ストーリーがとんでもなく面白かった。

そして、昨年発売された同著者の
「透明人間は密室に潜む」(光文社)は
2020年の年末ミステリランキング
「本格ミステリ・ベスト10」で1位に輝いた!

まだ26歳!これからどんなミステリを
描いてゆくのかとても楽しみな
ミステリ作家さん。

透明人間病の発生により、透明人間
との共存を余儀なくされた社会で、
ある学者が透明人間病を治癒できる
薬を開発するというニュースが!
それを知った、透明人間の女性が
学者を殺害する計画を立てる。
透明人間であることのメリットと
デメリットの区別を巧に描き分け
読んでる方も非常にイメージしやすい。
そして、驚くべきは殺害のトリックとその動機!
やはり表題作が一番インパクトが強かった!

アイドルヲタクを巡る殺人事件の
裁判で、裁判員全員がアイドルヲタク
という設定!彼らが繰り広げる
推理合戦は、有罪・無罪の結論から
離れ、とんでもない方向へと動きだす。
笑いが止まらないロジカルミステリー。
【六人の熱狂する日本人】

先輩探偵がある調査で盗聴器を仕掛けた。
そこには、殺人事件の現場の生々しい
音が収録されていた。
超聴力を持つ後輩女性探偵と先輩探偵は
その音から事件の真相を暴こうとするが・・・。
音を頼りに謎解きする設定がとても
面白かった。
【盗聴された殺人】

豪華客船からの脱出というゲームに
招待されたプレーヤーが誘拐され、
閉じ込められてしまう。
プレイとしての脱出ゲームを楽しみながら
誘拐の謎解きと誘拐現場からの脱出!
二転三転する展開がワクワク感を倍増させる!
【第13号船室からの脱出】

多彩なミステリの設定が面白すぎる!
きっとストックがたくさんあるんだろうな~

次回作がとっても気になります。

『透明人間は密室に潜む』
著者:阿津川辰海
出版社:光文社
価格:¥1,800(税別)