シリーズ最高傑作と言っても過言ではない!「月下蠟人 新東京水上警察」

吉川英梨さんの「新東京水上警察」シリーズ
第5弾「月下蠟人」を読みました。

この作品は、シリーズの中で一番
心を揺さぶられました。

コロナ禍の東京。
警視庁五港臨時署強行犯係でも
皆マスク着用、感染リスクに戦々恐々と
している中、青海埠頭で死体があがったと
連絡が入り、刑事防犯課強行犯係・
係長の碇拓真は、部下の日下部と
共に現場へ向かった。

それは、不気味な光景だった。
東京湾に突き出す巨大なガントリークレーンに
死体らしきものが吊り下げられていたのだ。
慎重におろして見るとそれは蠟人形だった。
そして、その中から男性の刺殺体が発見された。
胸元には「996」という数字。
さらに、蠟人形の異様な製法・・・。
顔の完成度は完璧なのに、それ以外は
ざっくりと作ってある。
絶対にプロの仕事ではないだろう。

そんな謎めいた死体の身元を知るきっかけを
くれたのは、碇の恋人で人手不足を補う
ために助っ人に入った有馬礼子だった。

礼子のヒントから真相に迫る五港臨時署強行犯係。
しかし、捜査に集中すべき時、班長・碇の
様子がおかしい。日下部は、いつもと違う
碇の姿に不穏な空気を感じ取った。

一方、碇は今までにない重い十字架を背負う
ことに・・・・。

とにかく、冒頭からこのシリーズのファン
を驚愕させる展開!
どうなっているの!?
こんなのあり!?と思わず叫びたくなる!

そして蠟人形に固められた刺殺体の
事件の真相はあまりにも悲劇的!
さらに、碇が背負いこんだ問題も
この事件に多少なりとも関わってくるのだ。

同僚と結婚し妻の出産が間近い
日下部は、苦しむ碇を優しく気遣う。
日下部の人間としての成長が際立った本作。

事件の真相が徐々に明らかになる過程は
読んでいると胸が締め付けられる!
こんなひどいことが・・・・。

涙なくしては読めない今作。
ラストは号泣してしまった。

本当に、シリーズ最高傑作です!

『月下蠟人 新東京水上警察』
著者:吉川英梨
出版社:講談社(文庫)
価格:¥740(税別)