切ない青春ミステリー。「Ghost僕の初恋が消えるまで」

天祢涼さんの新作「Ghost僕の初恋が消えるまで」
を読みました。

連続殺人犯に殺された16歳の少女・いのり。
いのりを姉のように慕っていた10歳の少年、理人。

死んでしまったはずのいのりはある日
理人の前に姿を現す・・・・。
いのりを想い続ける理人の描写がとても
切なくて心が震える。

第1章「16歳と10歳」
幽霊となって理人の前に現れたいのり。
犯人の顔を見たいのりは、いまだに
捕まっていない犯人の逮捕に協力
して欲しいと理人に訴える。
理人は、いのりのために犯行の証拠を
見つけるため、殺人犯に近づく。

第2章「16歳と13歳」
中学生になった理人の前に、突然いのりが現れる。
理人のクラスメートが自殺と殺人を
計画しているという。
これまでクラスのことを他人事ととらえ
何に対してもクールな態度でいた理人
だったが、改めてクラス内を見ると
教室内でいじめが起こっていることを目撃する。

第3章「16歳と16歳」
高校に進学した理人は吹奏楽部に入部。
コンサートのソリストに指名された1年生の
女の子がそれを拒否。騒動になってしまう。
いのりと理人はその理由を探ろうとする。

第4章「16歳と19歳」
大学に通う理人。年上だったいのりの年齢を
追い越した。幽霊となってずっと理人のそばに
いたいのりは、ついに成仏するときがきたと
告白する・・・。

4編が繋がる連作で構成されたミステリー。
理人と幽霊のいのりがその謎を明らかに
してゆく。

全編を通して感じられるのは、いのりを喪った
理人の大きな喪失感。
13歳になった理人の前に、いのりの霊が
再び現れるた時も、再会できた喜びと
いのりがゴーストだという哀しい現実に
揺れ動く。

4つの物語に張られた伏線。それが
回収されラストに繋がってゆく・・・。
そしてさらにエピローグ「20歳」で
胸がいっぱいになった。

いのりの優しさに涙があふれそうになる。

心に深く残る青春ミステリー。

『Ghost僕の初恋が消えるまで』
著者:天祢涼
出版社:星海社
価格:¥1350(税別)