斬新すぎる特殊設定ミステリ「Butterfly World 最後の六日間」

「珈琲館タレーラン」シリーズの著者
岡崎琢磨さんの本格ミステリー作品
「Butterfly World 最後の六日間」を
読みました。

斬新すぎる特殊設定の本格ミステリーであると
同時に、心に深い傷を受け、引きこもりになって
いた女性が再起を果たす青春小説でもある。

あることがきっかけで、引きこもりに
なってしまったアキは、VR空間に
自分の居場所を見つけた。

蝶の羽を持った人間のアバターが
生活するVR世界、「Butterfly World」だ。

そこは「非暴力」が徹底され、傷つくことはない。
友達になったマヒトとともに、
思う存分この世界を堪能していた。

本当はログアウトせずにずっとこの世界に
いたいと思うが、現実で食事や排せつ
をしなければならず、アキはもどかしい
思いを抱いていた。

ある時、ログアウトぜずにずっとこの
世界で暮らす人々がいることを知った
アキは、マヒトと一緒に彼らの住む
「紅招館」を探し出す。
アキはある事情からそこで暮らすことを
願うが・・・・。

しかし、突然の地殻変動で館の周りが
越えられない壁で囲まれる。
アキたちが館に住み始めたとたん、
住人たちが次々と死体で発見される
非暴力が徹底されているはずの
VR世界でいかにしてに殺人が成立するのか?

緻密な設定を施されたVR空間で起きる連続殺人事件。
この独特なクローズドサークルの設定が
凄すぎて、驚きの連続。
VRの世界と現実の世界を往復できる
というアイディアに絶句!

さらに読者への挑戦状!
練り練られた謎と伏線、それは簡単には見破れない。
解答編の伏線の回収は鮮やか過ぎてやられた感は
半端ない!

たった一つ、アキが引きこもりになって
しまったくだりを読んだ時は切なくて
苦しくなった・・・。

ゲームはやらないし、体験型の世界も
経験したことがないが、その世界観は
十分すぎるほど伝わってくる。
ワクワクしながら読めた。
この世界を知っている人が読めば
より理解が深まり、物語を楽しめると思う。

『Butterfly World 最後の六日間』
著者:岡崎琢磨
出版社:双葉社
価格:¥1,870(¥1,700+税)