大切なものを守るため、命を懸けた少女たちの熱い闘い「同志少女よ、敵を撃て」

第11回アガサ・クリスティー賞受賞作
逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」
(早川書房)を読みました。
第2次世界大戦で一番激烈な闘いを強いられた
「独ソ戦」。ソビエトは、ドイツに勝利
するために、女性だけの狙撃小隊を編成。
そこに集められた少女たちの命がけの
闘いのすべてを描く。心が揺さぶられる傑作。

第2次世界大戦中、ソビエトはヒトラー率いる
ドイツと激しい闘いを繰り広げていた。

モスクワ近郊の小さな農村で母と暮らす少女・
セラフィマは、猟を得意とし捕った獲物は、
村の皆に分けていた。隣近所も家族のように
仲が良かった。

ところがある日、突如村に現れたドイツ兵に
よって彼女の平和は崩れ去った。
村の皆は殺され、焼かれ、母も惨殺された。
セラフィマは射殺される寸前、赤軍の女性兵士
イリーナに救われる。
だが、セラフィマの目の前で母の亡骸は冒涜された。
イリーナを憎むセラフィマ。
そんな彼女にイリーナは問う。
「戦いたいか、死にたいか」と・・・。

イリーナが教官を務める少女狙撃隊に入隊した
セラフィマは、同年代で同じような境遇の少女たちと
ともに厳しい訓練に耐え、一流の狙撃兵へと成長してゆく。

セラフィマの思いはただ一つ、復讐だ。
母を殺したドイツ兵と、母の遺体を焼いたイリーナに。

やがて、セラフィマたちは独ソ戦の転換となる
スターリングラードの前線へと送られた・・・。

訓練生たちと深い友情の絆を結んだセラフィマ。
しかし、死は否応なく訪れる。
目の前で銃弾に倒れる、仲間・・・。
凄まじい死の恐怖に怯えながら、それでも
復讐のために必死で敵を倒す。

圧倒的筆力で描かれる、戦争の非情さ、地獄。
そして、少女たちの心のゆらめき。
地獄にあっても、未来に夢を繋げる健気な
少女たちの心の強さが胸に突き刺さる。

この作品がデビュー作?
とても信じられない。凄すぎる、上手すぎる。

読後の余韻がいつまでも残る。
心を掴んで離さない、傑作中の傑作。

『同志少女よ、敵を撃て』
著者:逢坂冬馬
出版社:早川書房
価格:¥2,090(本体¥1,900+税)