ついにあの男の正体が!?「マネーの魔術師ハッカー黒木の告白」

榎本憲男さんの「マネーの魔術師ハッカー黒木の告白」を読了。
「巡査長真行寺弘道」と「DASPA吉良大介」シリーズの
両方に謎の男として登場する、黒木またははボビー。
それぞれのシリーズを読んでいる時に度々登場するが、
一体何者かとずっと気になっていた。
とても興味深い人物像で描かれている!

熊野古道の近くを大きな荷物を
ひいて歩いていた男。
てっきり旅行者だと思い、親切心で
車に乗せた大学院生の柴田澪。

しかし、彼は旅行者ではなく、
これからここに住むと言う。
しかも、伝統工芸の津越木工房
を探していた。
頻繁に津越木工房に出入りしている澪は、
早速彼をそこへ連れて行った。
そして、びっくりするくらいの大口の
注文をした。

謎の男に興味を持った澪は、今自分が
抱えている研究課題「伝統工芸の行く末」、
それが行き詰まっていることを隠さずに話す。
そして男も澪に今まで自分がやってきた
ことを語った。

幼い頃から、コンピューターの
プログラミングに異常に詳しかったこと。
日本では認められなかったこと。
自分のプログラミングに興味を
持ったアメリカに渡ってCIAで
仕事をしたことなどなどetc・・・。
名前も黒木とかボビーとか偽名生活を
送っている。

そして、澪の伝統工芸を何とかしたいと
いう強い思いを聞いた黒木は澪にある提案をする。

金の亡者たちが創り上げた「金融資本主義」
に抗う実験・・・・。
澪はとまどいながらも、彼の実験に従うことに。

圧巻は、今の経済の成り立ちや金融資本主義について、
サブプライムローンは何故崩壊したのか?など
ニュースで知っているけれど、いったい何が
起こってたのか?ということを
黒木が澪にわかりやすく語るくだりだ。
「長い長い夜」という章で丁寧に語られる。
この章がとにかく面白い!

後半ではおなじみのメンバー、真行寺、森園、
サラン、吉良も登場し、澪と繋がっていく
過程も楽しい。

黒木の目論見は成功に繋がるのか?
「金」だけではない。もっと他にも
大切にしなければならないものがあるのではないか?

「金」だけでは本当の豊かさを得ることは
出来ない。何が人間の本当の幸せに繋がるのか?

この作品を読むとわかるかもしれない。

『マネーの魔術師 ハッカー黒木の告白』
著者:榎本憲男
出版社:中央公論新社(文庫)
価格:¥990(本体¥900+税)