奇想天外な誘拐!?「午前0時の身代金」

第8回新潮ミステリー大賞受賞作、京橋史織さんの
「午前0時の身代金」を読みました。

古今東西、ミステリー小説に登場する
「誘拐事件」。犯人の莫大な身代金要求に
被害者・警察は頭を抱える。しかし身代金
受け渡しの時が犯人確保のチャンス!
ところが、犯人に翻弄され、犯人確保に
失敗する・・・という設定が多かったように思う。

今作「午前0時の身代金」は、誘拐犯から犯行宣言と
身代金一〇億円をクラウドファンディングで日本国民
から募集するという前代未聞の荒業が見事!

新人弁護士の小柳は、上司の国際派の企業弁護士・
美里千春から、詐欺事件の相談に来る本條菜子の
力になってほしいと頼まれる。
現れた菜子は、事件に巻き込まれたのではなく
自分自身が詐欺を働いたというのだ。

友人からちょっと頼まれた仕事。それは受け子の
バイトだった。菜子は友人の彼氏である、
詐欺リーダーの男の罠にまんまとはまり、
犯罪に引きずり込まれてしまった。
それを止めようとした菜子の友人は男に
殺されてしまう。

菜子は友人の仇をとるために、大掛かりな取引の
妨害をしようとするが失敗。逆に男たちに
追われる羽目になってしまう。

それを助けたのが、美里だった。
話を聞き、菜子を送る道々、菜子が行方不明に
なってしまった。

翌朝、美里のクライアント、IT企業サイバー
アンドインフィニティ社に誘拐犯からの犯行宣言と
身代金10億円をクラウドファンディングで日本国民
から募集しろという脅迫メールが届く・・・。

特殊詐欺事件から端を発した誘拐事件。警察
マスコミを翻弄する劇場型犯罪。大手IT企業を
襲った奇想天外な身代金要求!
どんでん返しに次ぐどんでん返し。
そして、想像を絶する真相に驚愕する。

群を抜くリーダビリティと時代の最先端をゆく斬新な設定。
最高に面白い、企業サスペンスミステリー。

『午前0時の身代金』
著者:京橋史織
出版社:光文社
価格:¥1,650(本体1,500¥+税)