犬愛が半端ないミステリー!「犬を盗む」

犬を飼っていない、私でもうるっときました。
愛犬家のミステリー作家・佐藤青南さんの
「犬を盗む」(実業之日本社)
読了しました。

高級住宅地で、80歳の老女が殺された。
警視庁捜査一課の植村たちは、老女の
周辺を捜査。
老女は愛犬家だったらしい、家の中では
殺害されるまで、犬を飼っていた形跡があった。
しかし、その犬が消えていた。
事件解決の手がかりを掴めるかもしれない。
植村たちは犬の行方を追うことに・・・。

一方、コンビニでアルバイトをしている
松本は、最近になって犬を飼い始めた。
そこで松本の後輩として接している鶴崎。
実は松本の過去を暴き、スクープを
ものにしようとするある雑誌編集部
から送り込まれたフリーの雑誌記者だった。

松本は少年時代、両親と飼い犬を殺害した
殺人犯だった。しかし、刑期を終え、
更生し名前変えて社会に復帰し片隅で生きている。

鶴崎は、松本が凶悪な事件を起こしたことを
不思議に思った。
穏やかな性格で、犬に対する愛情は半端ない。
自分がシフトの時は、鶴崎に散歩を頼む。
そんな松本が凶悪な事件など起こすだろうか?と。
そう思い始めると、松本の過去の暴露記事など
書けそうにない。しかし編集長からは催促の
連絡が・・・。

ミステリー作家の小野寺真希は、男が
犬を散歩させているところを見かけた。
あの犬は確か老女が散歩させていた犬だ。
なぜ男が散歩させているのか・・・?
不審を抱いた真希は、その男を調べると
信じられない過去にたどり着く。
犬を愛するがゆえに起こした行動が
自分自身の首を絞めることに・・・。

三者三様の動きが事件の謎を深めてゆく・・。
「犬」を巡り、刑事・雑誌記者・殺人という
過去を持った男・狂気に奔る女流ミステリー作家。
彼らが交差し、次第に事件の核心に迫ってゆく
過程は、読み応え満点で非常に面白い!

章の間に挿入される、犬目線と思われる
つぶやきによって、次第に犬が飼い主に
信頼を寄せてゆくところが凄く良かった。

クライマックス、仰天の真相に絶句!
さらに「犬」への愛情が凄すぎて
ホロっときてしまった。

『犬を盗む』
著者:佐藤青南
出版社:実業之日本社
価格:¥1,870(本体¥1,700+税)