冲方丁の『光圀伝』が面白すぎます!

ミステリー小説の紹介と言いながら、いま本屋大賞ノミネート作品を読んでいまして、なかなか紹介できず!すみません!!!
今回も本屋大賞ノミネート作品からめちゃめちゃ面白かった作品を紹介します。

本屋大賞にノミネートされている、冲方丁さんの『光圀伝』(角川書店)を読みました。
750ページもあり読み応えたっぷり!時代劇ドラマでおなじみの「水戸黄門」の真の姿を描いた力作です。なんとこの作品、あまりの面白さに夢中になって読んでしまいました。

徳川家康の十一男で水戸徳川家の始祖・徳川頼房の3男として生まれた光國は、兄二人を差し置いて水戸家の世子となる。
長兄の竹丸は幼いころ天然痘にかかり死にかけた。次兄の亀丸は夭逝し、竹丸がどうなるかわからない状況で、光國は当時の将軍・家光から直々に世子として認められたのだ。
子どもの教育に非常に厳しかった父親は、光國に対して特に厳しいお試しを課した。
しかし光國はその厳しいお試しに、‘俺は世子だ’と自分に言い聞かせ徹底的にやり遂げる。
そういう育てられ方をすれば、当然気性は激しい。
兄を死に損ないと言い放ち、常にライバル心を燃やす。しかし、兄・竹丸はそんな弟の激しいライバル心などどこ吹く風・・・。そのクールさに憎しみさえ覚える光國。
だが、光國も12歳の時兄と同じ天然痘に罹る。
隔離され死の恐怖に怯えながら苦しむ光國を見舞ったのは、兄・竹丸だった。
兄の優しさに触れた光國は、次第に兄に心を開く。
長じて光國が日々苦しんだのは、兄がいるのになぜ自分が世子なのか・・・。
それは不義ではないのか?!。そんな思いに囚われ、光國は10代の頃はりっぱな傾奇者。
水戸家の世子とわかっていながら、その身分に恐れおののく光國。
そして兄に甘えるのだった・・・・。

冲方さんの描いた光國が人間的にあまりにも魅力的。
泰平の世に向かい、戦のない世で武士はどうあるべきか・・・。
文武両道というけれど、光國は桁違いにすごい。将軍・綱吉が嫉妬するのもうなずける。
光國の最大の目標は、愛する兄を差し置いて自分が世子になったことで、捩じれた‘不義’なるものを‘義’に戻すこと。その決心とは当時の誰もが思いもよらなかったことだった・・・。

ドラマだけでしか知らなかった、天下の副将軍・水戸光國の真実の姿がドラマティックに描かれた、胸が熱くなる凄く面白い歴史大河小説です。

『光圀伝』
著者: 冲方丁
出版社:角川書店
価格:¥1,900(税別)