言葉にできない感動・・・『私を知らないで』白河三兎

会社の同僚に薦められて読んだ、メフィスト受賞作家・白河三兎の描き下ろし長編『私を知らないで』。が素晴らしかったです。
デビュー作は、ユーモアチックなミステリー作品らしいです。何の予備知識もなく読み始めましたので、この作家がどういう系統の作品を描くのか全然わからず・・・・。でもそれだから良かったのかも・・・。

物語がどこへ向かうのか・・・?最初から謎だらけ。ミステリーなのか?青春小説なのか?恋愛小説なのかわからないまま、あまりの文章の美しさに何の抵抗もなく読んでしまいました。

転勤族で何度も転校を繰り返している中学生の黒田慎平は、新たに転入したクラスで自分の居場所をつくるため、静かに人間関係を探っていた。
この教室のボス猿は誰だ?一番苛められているのは・・・?苛められているというほどのことでもないが、まったく空気のような存在にされてしまっているのが、誰もが一目で美しいと思ってしまう、新藤ひかり。なぜか「キヨコ」と呼ばれている・・・。
慎平はひかりの美しさと、凛とした潔いたたずまいに惹かれていく・・・・。

今どきの中学生はそんなことを考えながらクラスにいるのか・・・。自分の甥っこの気持ちがこのシーンでちょっと理解できたりして・・・。
真平がクラスに溶け込んだ頃、新たな転入生がやってくる。
彼の名前は高野。
周りの空気をまったく読まない(読めない?)彼は、ストレートにクラスメートに突進していく。
そして「キヨコ」を守るために立ち上がるのだ。そんな高野に巻き込まれていく慎平。

謎めいたキヨコ。慎平が彼女を探ろうとするするシーンはミステリーチックで驚きの展開。
そして暗くてつらい過去を持つキヨコ。祖母と二人暮らしなのに、祖母の姿が見えない・・・いったいどこへいったのか?こういう謎もミステリー作家だから非常に上手い描き方。

ガラスのようにもろく、しかし残酷な十代の子供たちの心を美しすぎる言葉で紡いでいく。
そしてラストの着地点は、だれも想像だにできない!!あまりの感動で涙がとまらない!!
こんなに美しい小説読んだことがありません!ぜひぜひ読んでほしい。

『私を知らないで』
著者:白河三兎
出版社:集英社(文庫)
価格:¥650(税別)