切なくて悲しくて、そして恐ろしいミステリー小説、『彼女は存在しない』

不思議なタイトルに惹かれて読んでしまいました。
『彼女は存在しない』浦賀和宏著。
浦賀さんの本ははじめて読みました。

平凡だが、幸せな生活を楽しんでいる香奈子。
貴治という恋人もいて、好きな映画、好きな音楽を楽しむ日々。
しかし、貴治がある日突然何者かに殺されたのを契機に、香奈子の日常が狂い始める。
一方、根本は妹・亜矢子の度重なる異常行動を目撃し、亜矢子はもしかして、多重人格ではないかと疑い始める。
次々と発生する凄惨な事件が香奈子と根本を結びつけていく。
そしてその出会いが意味したものとは・・・・!?

香奈子と根本、二人の視点で物語は進む。
根本の妹、亜矢子は多重人格。彼女の行動がこの物語の大きな鍵なのだ・・・・。
しかし読み進めるうちに、迷宮に迷い込んだような感覚に陥る。
次々と張り巡らされた伏線には翻弄されるからだ。
凄惨なクライマックスから、あまりにも予想外の真相に度肝を抜かれた。
自ら多重人格ではないかと疑う亜矢子、多重人格の妹に翻弄される根本、恋人を失い生きる希望を失った香奈子。それぞれの登場人物が痛々しい。
切なくて悲しい青春ミステリー。

『彼女は存在しない』
著者: 浦賀和宏
出版社:幻冬舎
価格:¥686(税別)