ラストの感動が半端ない!!長岡弘樹『線の波紋』

著者は、2008年『傍聞き』で日本推理作家協会賞短編部門賞を受賞。
『傍聞き』は短編ながら、その緻密さと完成度の高さで絶賛されました。
本書『線の波紋』は、短編でありながら、それぞれの登場人物がひとつの事件で繋がっているという連作短編の形になっています。

『談合』は、娘の真由を誘拐され、さらにその直後夫が倒れ、鬱に苦しんでいた白石千賀は、事件から1ヶ月経ち役場の仕事に復帰、キャリアアップを目指す。そんな時入札業者からの不審な電話に衝撃を受ける・・・。
『追悼』は、誘拐事件から2ヶ月後、同じ町内に住む若い会社員・鈴木航介が死体で発見された。不思議なことにその死顔には笑みが浮かんでいた。同僚の久保和弘は、その1週間前、経理部員である、航介から不正を指摘されていたのだ・・・。
『波紋』は、少女誘拐事件で地道な捜査を続けていた、刑事・渡亜矢子がついに容疑者に辿りつくが・・・。
『再現』は、それぞれ点のように散らばっていた物語が一つの線となり、事件の全貌が明らかになる・・・。
どの短編も少女誘拐事件に関連して、読んでいるとつらい。しかしラストに必ず救いが用意されている。
その救いとは小説では決して言葉にしていない、エピローグで著者が読者に見せるイメージ・・・。それこそがこの作品の最大の衝撃だ。
そのシーンをイメージした瞬間、思わずハッ!とし、そしてうねるような感動の波がじわじわと押し寄せてくる・・・。

それこそ心に波紋のように広がっていくこの感動を味わって欲しい!!。

『線の波紋』
著者:長岡弘樹
出版社:小学館
価格:¥619(税別)