著者独特の世界観で描かれる人間の怖さ、「少女たちは夜歩く」。

宇佐美まことさんの世界観にはまると抜け出せなくなる…?

城山を舞台に、10編の短編が
紡ぐ、幻想的で怖い….物語。

城山の森の描写が非常に不気味で、登場人物たちの
心に闇が訪れた時に、その魔界にはまってしまうような
悲劇が待ち構えているような、ざわざわした気持ちに
なってしまう。

恋に狂う女子高校生、病を抱えながら息子を思う父、
奇妙な絵の修復をするうちに狂気の世界へと
引きずり込まれた女性、謎のケモノを操る少年?
亡くなった人が見えてしまう女性…。

それぞれの物語の登場人物たちがあるところでは
リンクし、時に時間を飛び越え物語が進んでゆく。

ファンタジックな展開、ホラーとしか表現できない
物語。読み進むうちに頭がくらくらしてくる。
しかし、それこそが著者が物語に仕掛けた罠なのか。
読み手を翻弄する展開の巧さに絶句する。

ホラー、ファンタジー、ミステリーが絶妙な
バランスで融け合い、著者独特のダークさを
醸し出しているところが凄い。

宇佐美さんの世界を存分に堪能できる、傑作。

『少女たちは夜歩く』
著者:宇佐美まこと
出版社:実業之日本社
価格:¥1,600(税別)