「共震」は東日本大震災がテーマ、鎮魂と慟哭のミステリー

「震える牛」で現代日本の病巣を鋭く抉り、読者を戦慄させた著者が新たに描く!東日本大震災の現状と復興への願い!!


著者は、震災前に取材で何度もみちのくを訪れていた。それ故に描かなければならないと強い意志があった。
実際に被災地で横行していたと思われる事件を取り上げ、ミステリーに仕上げた。
東日本大震災から2年後、大和新聞東北総局で遊軍担当記者としての日々を送る宮沢は、震災コラムで新たな特集を組もうと取材中だった。
そこへ飛び込んできた、殺人事件の速報。
被害者の名前を聞き、宮沢は唖然とする。
殺害された男性は、宮沢も良く知る県職員・早坂だった。
震災後、復興のために自らを犠牲にして働きつづける早坂。
被災地を巡り、震災で家族も何もかも失った人たちの心に寄り添い、被災者の心の支えとなっていたあの早坂がなぜ、どんな理由で殺されなければならなかったのか!?宮沢は言いようのない怒りを覚えた。
早坂のために早速調査を開始する宮沢。
一方、警視庁刑事部捜査二課管理官・田名部は、広域知能犯撲滅の本部担当として岩手に来ていた。
そして早坂の殺害事件に関わることになる。
宮沢が、殺された早坂を思い浮かべるシーンから、東日本大震災が起きた2011年3月11日へと場面が切り替わる。
その後は震災の惨状と震災後の現状が交互に描かれ、事件の真相究明も進んでいく。
ミステリーとしての謎解きは極力削られ、被災地と被災者の現状に焦点が当てられる。
震災から2年が経過したが、一向に進まない被災地の復興と、それでも必死で頑張っている被災者の人たちの物語を読むと涙が止まらなくなる。
著者の復興への強い願いと、決して忘れてはいけない現実をつきつけられ、心が揺さぶられる。
しかしそんな状況の中で、人の不幸につけこむ禿鷹ような輩がいるのだ。
震災の騒乱で陰に隠れていたであろう事件をクローズアップし、さらなる被災地の現状を描いた。
社会派サスペンスでありながら、東日本大震災の被害者への鎮魂の書でもある。
読みだすと涙が止まらない!被災者の叫びが聞こえる!鎮魂と慟哭のサスペンスミステリー!
『共震』
著者:相場英雄
出版社:小学館
価格:¥1,500(税別)