「ぼっけえ きょうてえ」はほんとに「とっても恐いです。」

ぼっけえ

タイトルの意味「ぼっけえ きょうてえ」は岡山の方言で「とても恐い」という意味。
この作品は、表題作「ぼっけえ きょうてえ」のほかに「密告箱」「あまぞわい」
「依って件のごとし」の4つの短編を収録したホラー作品集です。
どの作品も怖いというより、おぞましいと言った表現の方があってるかも・・・。
第6回日本ホラー大賞、第13回山本周五郎賞受賞作。

表題作「ぼっけえきょうてえ」は、岡山の遊郭で醜い女郎が客に自分の身の上を語り始める。
その人生は血と汚辱にまみれた地獄道だった。
そしてその女郎の醜さには実は恐ろしい秘密があったのだ!

岡山の方言で語られる恐怖譚は、わからない言葉も出てくるが、
逆にそれが怖さを助長し、うすら寒く感じる。
そしてこの女郎の本当の秘密がわかった時には、思わず本を投げてしまったほど。

他の3篇の中で怖いのは「あまぞわい」。
漁師の夫がありながら、網元の息子と不倫をし、夫に見つかり網元の息子は殺され海に捨てられてしまう。
そんな女性を襲う怪異現象。女性の後ろにいるおぞましきものとは!?

男と女の情念のようなものが、とてつもない恐怖へと繋がっていく。
こんなホラー小説を描けるのはこの岩井さんしかいないと思う。

残暑が厳しい、夏の終わりにぴったりのホラー作品。

『ぼっけえ きょうてえ』
著者:岩井志麻子
出版社:角川書店
価格:¥476(税別)