文豪・谷崎潤一郎の犯罪小説がすごい!!

中公新書「日本ミステリー小説史」で紹介されていた
谷崎潤一郎が描いたミステリー小説を読みました。

紹介されていたのは「途上」。
その作品が収録されていたのが、
「谷崎潤一郎犯罪小説集」です。

谷崎潤一郎といえば、大正、昭和初期に当時では
ショッキングな退廃的な小説描いて注目!

はまさきも「痴人の愛」「細雪」は高校時代に
読みました。確かに「痴人の愛」は衝撃的!!
大正時代に出版しても良いのか!?と思ったくらい。

そんな谷崎が描く「犯罪小説」とはどんなものか?

「柳湯の事件」「途上」「私」「白昼鬼語」の
4作品が収録。
その中でも特にはまさきが驚いたのは、
「途上」と「白昼鬼語」の2作品。

「途上」は人事部に勤務する会社員が帰宅途中、
突然私立探偵に声をかけられるところから始まる。
社員の身元調査という話なのに、探偵はその会社員の
亡くなった妻についてしきりに聞いてくる。
会社員は新たに妻を迎えようとしているが・・・。
探偵は道々ある推理を展開するのだ。
それは夫が妻に仕掛けた危険な罠・・・。

二人の会話だけで話は進んでゆく。しかし探偵の推理を
聞いている内に会社員は恐怖にかられてゆく。
その緊迫感がひしひしと伝わってきた。
江戸川乱歩曰く「プロバビリティーの犯罪」に焦点を
あてた、サスペンスミステリーの傑作。

「白昼鬼語」は、富豪だがちょっと変わった男が、
偶然手にした不思議な暗号文を解読し、この日、
この場所でこの時間に殺人事件が起こると断定。
唯一の友人を無理やり誘い、現場に向かう!

暗号解読の手段は、あの名作をヒントに描かれている!

さらに、事件現場に登場する女性の描写が、退廃的かつ
官能的で、谷崎の語彙の多さとその使い方の上手さに
酔いしれてしまう・・・。
そしてトリッキーなラストには言葉もない。

文豪が描く、犯罪小説の凄さを堪能しました。

『谷崎潤一郎犯罪小説集』
著者:谷崎潤一郎
出版社:集英社(文庫)
価格:¥480(税別)