慟哭のラストに絶句!「検察側の罪人」

「火の粉」「犯人に告ぐ」「犯罪小説家」「クローズド・ノート」など話題作を
描きつづけている、雫井さんの新作は『検察側の罪人』(文藝春秋)。
意味深なタイトル。読み進むんでいくと、その意味が徐々に理解できます。
でもそれがわかったとき、背筋が凍ります。
普通に信じていたものがもろく崩れ去っていく・・・そんな感じ。

検察罪人

東京地検のベテラン検事・最上のもとに教官時代の教え子、
沖野が配属されてきた。最上は沖野の正義感をかっていた。
まっすぐで曇りのない目で物事を見つめる沖野は検事に
向いていると思った。
そんなとき、老人刺殺事件が起きる。
捜査にたちあった最上は、一人の容疑者の名前に憶えがあった。
すでに時効となった殺人事件の重要参考人と当時目されていた
人物だったのだ。この男が今回の事件の犯人ならば、
最上は今度こそ法の裁きを受けさせると決意するが、沖野が
捜査に疑問を持ち始める。

ここから「検察側の罪人」の意味が徐々に分かり始める。
‘罪人’とはいったい誰を指すのか?
事件の行方は予期せぬ方向へと繋がり、最上と沖野の
対決は激しさを増してゆく・・・。
そして、一点の曇りのない検事としての正義を貫こうと
していた沖野が悟った正義とは・・・正義とはいったい何なのか!?
沖野の咆哮が心を貫く・・・。
読んでいる側も、沖野とシンクロし、真の正義とは
いったい何なのか?問われたままで終わるのだ。
だからいつまでも心に残る・・・。
雫井さんの作品の素晴らしさはそこにある。

『検察側の罪人』
著者:雫井脩介
出版社:文藝春秋
価格:¥1,800(税別)
   文庫版 上巻:¥650、下巻:¥630(税別)